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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2022-12-13 Nature 誌から査読済み論文として刊行されたことから、その書誌情報を追記した。
2022-10-17 bioRxiv 投稿に準拠した初稿
[注] トランスポゾソーム(transpososome) : トランスポザーゼと核酸の複合体;トランスポゾンの一部とトランスポザーゼを含む核タンパク質複合体
[出典] "Structures of the holo CRISPR RNA-guided transposon integration complex" Park JU, Tsai AWL, Rizo AN [..] Kellogg EH. (bioRxiv 2022-10-12) Nature 2022-11-28. https://doi.org/10.1038/s41586-022-05573-5 [著者所属] Cornell U.
 CRISPR RNA誘導型トランスポゾンは、CRISPR-associated transposon(CAST)と称され、ガイドRNAによって大きなDNAカーゴをゲノムへ挿入するプログラム可能な移動要素(programmable mobile element)であるが、移動先の部位において、複数の構成要素が複合体(トランスポゾソーム)を構成・協働することが知られている。コーネル大学の研究チームは今回、Scytonema hofmannii のタイプV-K CAST(ShCAST)トランスポゾソームのクライオ電顕構造を3.6Åの分解能で再構成した。
  • Kellogg 1サイズがほぼ1 MDaのShCASTトランスポゾソーム(transpososome)は、Cas12k、TniQサブユニット、リボソームS15サブユニット、4つのTnsBサブユニット、および2つのTnsCサブユニットから構成されている [Fig. 1引用右図参照]。また、TnsCプロトマーを12または13含む2つの異なるトランスポゾソーム集団が存在する。この中で、前者が73%を示すことから、前者をmajor configuration、後者をminor configurationと呼ぶ。
  • トランスポゾソームは、TnsCがTniQおよびTnsBに対して一定の極性と専用の相互作用面を持ち、Tn7トランスポジションのモデルと一致するCAST要素間の方向特異的な結合を促進する構造をとっている。
  • Kellogg 6Cas12k、TniQ、およびS15はRループ形成を安定化し、TniQとTnsCがCRISPRエフェクターとトランスポザーゼの間の主要な接続部を形成している [Fig. 6引用右図参照]。
  • TnsBは、TnsCと相互作用することで、TnsCのATP加水分解活性を促進する。
  • トランスポゾソームにおいて、TnsCプロトマーは、ヘリカルTnsCフィラメン(Science 2019)とは異なるターゲットDNAとの相互作用をもたらし、また、トランスポーズ活性に重要である。
 今回トランスポゾソーム構造から得られた知見は、ShCASTトランスポジションの理解に大きく貢献するとともに、より精密な編集に向けたタンパク質工学の道を切り開くものである。
 [構造情報]
  • PDB 7SVU/EMD-25453: TnsB<ctd>-TnsC-TniQ complex
  • PDB 8EA3/EMD-27971: Transpososome major configuration
  • PDB 8EA4/8EA4/EMD-27972: Transpososome minor configuration
 [トランスポゾソーム関連レビュー]
 [コーネル大学チームからの先行論文]
 [ShCAST関連論文]
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