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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/02/02

  • [論文] Vibrio cholerae のヘム分解酵素(HutZ)への細胞内ヘムトランスポーターはヘム結合タンパク質(HutX)であった:内田 毅 (北海道大学)
  • 研究チームは2012年にV. cholerae のヘム結合タンパク質HutZがヘム分解酵素であることを報告したが、HutZが細胞質においてヘムを獲得する機構は不明であった.今回、HutXが特異的なタンパク質間相互作用によってヘムをHutZヘ転移することを明らかにした.
  • V. cholerae のゲノムにおいてHutZがhutWXZ オペロンにコードされていることに注目した.この中でHutWは、[4Fe-4S]クラスター結合サイトを含むラジカルSAMスーパーファミリーに属することからHutZの還元酵素と推定した.一方、HutXが ヘムに結合し利用するメンバーを含むChuX-HutXスーパーファミリーに属することから、HutXがHutZへのヘムトランスポーターであると推定した.
  • HutXをEscherichia coli において発現、精製し、フォトンファクトリーのビームラインBL17AaよってX線結晶構造解析を行った.HutXは二量体として存在していた.
  • UV-Vis吸収分光分析は、HutXがヘムに化学量論比1:1で結合し、結合親和性が7.4nMであることを示した(HutZとヘムの結合親和性は52nM).また、ヘム-HutXのバンドが、apo-HutZと混合すると直ちに消え、新たにヘム-HutZのバンドが生じることを見出した.このヘム転移速度は、HutXとアポミオグロビンへのヘムの転移速度の4倍以上であった.
  • 表面プラズモン共鳴法によってHutXとHutZの相互作用解析も行い、HutXとHutZの間の解離定数が400μMを超えることを見出した.したがって、HutX-HutZからのHutXの遊離が極めて速く、HutXとHutZの間の相互作用は微弱であり、それがゆえに、HutZと還元酵素の複合体形成ひいては電子伝達が促されると考えらる.
  • HutXのX線結晶構造とE. coli 0157:H7における相同タンパク質ChuXの構造との比較、ならびに、ヘム-HutXの共鳴ラマン分光からは、Tyr90が鉄ヘムの軸配位子であることが明らかになった.

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