crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] "CRISPR/Cas9-induced structural variations expand in T lymphocytes in vivo" Wu J, Zou Z, Liu Y [..] Xu M, Hu J. Nucleic Acids Res 2022-10-16. https://doi.org/10.1093/nar/gkac887 [著者所属] Peking U, National Institute of Biological Sciences, Tsinghua U.
 CRISPR/Cas9技術は、養子免疫T細胞療法(遺伝子改変T細胞療法)に伴う移植片対宿主病の回避を目的とする内在遺伝子などのノックアウトにも利用されている。一方で、ゲノム編集は、染色体転座や大きな欠失を含む有害な構造変異(SV)を誘導するとする報告が続き、患者への遺伝子改変T細胞導入に対する安全性の懸念が高まっている。
 CRISPR/Cas9遺伝子編集がオンターゲットそしてまたはオフターゲットに誘導する染色体転座の頻度は、0.1-1%と見られている [出典の参考文献 13, 14,18, および19参照]。養子免疫T細胞療法では数十億の遺伝子改変TCRまたはCAR T細胞が利用されることから、患者には、染色体転座が誘導された数百万のT細胞が導入される可能性がある。しかし、導入された遺伝子改変T細胞の行く末については、導入ゼブラフィッシュの子孫で観察されたが [出典の参考文献27]、導入後の生体内の動態は捉えられていなかった。
 北京の研究チームは今回、T細胞受容体(TCR)を組み換えたT細胞を移植した養子免疫T細胞療法トランスジェニック (Tg)マウスモデルにおいて、SVの動態をモニターした。
  • 研究チームはHelicobacter hepaticus  特異的TCR-Tgマウス(HH7-2tg)のCRISPR/Cas9編集T細胞をRag1-/-マウスに注入することで、T細胞による腸炎を3週間または最長2ヶ月間誘発させた。
  • CRISPR/Cas9によって誘導された小規模な挿入と欠失(indel)のレベルは、遺伝子改変T細胞導入の如何によらず一定であった。
  • SVのレベル、特に転座や大きな欠失は、3週間あるいは2ヶ月間、遺伝子改変T細胞導入の前後で同程度であった。スクリーンショット 2022-10-17 11.32.13
  • 一方で、数十の転座、大規模な欠失、ウイルスのDNA統合が、T細胞のクローン性増殖を介して、遺伝子座非依存で確率的に増幅・維持され、最大で数千のコピーに至ることが明らかになった [Figure 2引用右図参照]。
 CRISPR/Cas9による遺伝子改変を施したT細胞は、導入後の生体内で、SVやウイルスのDNAインテグレーションが持続し、ゲノムの完全性を常に脅かす可能性がある。
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット