[出典] "Proteome effects of genome-wide single gene perturbations" Öztürk M [..] Butter F. Nat Commun 2022-10-18. https://doi.org/10.1038/s41467-022-33814-8 [著者所属] Institute of Molecular Biology, UCSF, Ludwig-Maximilians U Munich, Justus-Liebig-University Giessen.
タンパク質量は転写、翻訳、翻訳後の各ステージで制御されており、その制御原理が明らかにされつつある。これらの原理を調べるには、大規模なプロテオミクス・データが必要であり、一般にタンパク質量のプロキシーとして用いられる転写の結果 mRNAの量だけでは不十分である。
独米の研究チームは今回、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe の3308個の非必須遺伝子を個別にノックアウト (KO) したライブラリー [*1] を利用して [Fig. 1引用右図参照]、ゲノムワイドで単一遺伝子KOがプロテオームに及ぼす変化 (proteome remolding) を捉えた。
タンパク質コーディング遺伝子の56%にあたる2,921種類のタンパク質 (KO変異株あたり平均1,596タンパク質;1,369〜1,996タンパク質)のレベルを把握し、以下に関する知見を得た:
分裂酵母にて今回得られた結果は、パン酵母からヒトまで他の生物種にも適用可能であり、また、プロテオーム変化の類似度に基づいてクラスタリングによる遺伝子機能の推定にも展開可能 [*2] である。
研究チームは今回の解析結果をデータベースとして公開した [Schizosaccharomyces pombe KO library viewer https://butterlab.imb-mainz.de/SpProtQuant/]。データベースでは5種類のデータ型を検索可能である:
- 単一遺伝子のKOが他の遺伝子のタンパク質レベルに与える影響
- 異なるノックアウト株における単一タンパク質のレベル
- 標的遺伝子のタンパク質レベルに類似した影響を与えるノックアウト株のクラスター
- 単一遺伝子のノックダウンで類似の効果を持つ遺伝子のクラスター
- 単一遺伝子のノックダウンによる標的遺伝子のmRNAとタンパク質のレベルの変化の相関
[*]
- "Analysis of a genome-wide set of gene deletions in the fission yeast Schizosaccharomyces pombe " Kim DU, Hayles J, Kim D, Wood V, Park HO, Won M, You HS [..] Hoe KL. Nat Biotechnol 28, 617–623 (2010). https://doi.org/10.1038/nbt.1628
- 分裂酵母は、その特徴 (スプライシング、RNAi、染色体の構造、細胞質分裂、ミトコンドリア代謝など)から、パン酵母 (S. cerevisiae)よりも、ヒトに近いモデル生物である [出典論文のIntroductionから引用]。
2022-09-12 [レビュー] mRNAとタンパク質、その遺伝子発現制御の原理 https://crisp-bio.blog.jp/archives/30184121.html;REVIEW "mRNAs, Proteins and the emerging principles of gene expression control" Buccitelli C, Selbach M. Nat Rev Genet 2020-07-24. https://doi.org/10.1038/s41576-020-0258-4;図6(mRNAのレベルとタンパク質のレベルの間にある緩衝機構)を右図に引用
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