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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/02/02

  1. [論文] 精密医療: 患者由来iPSCにおける網膜色素変性症の遺伝子修復:Stephen H. Tsang (Columbia U.); Vinit B. Mahajan (U. Iowa)
    • X染色体劣性遺伝網膜色素変性症(XLRP)の病因であるRPGR(retinitis pigmentosa GTPase regulator)点突然変異が起きている患者の皮膚からiPSCを樹立し、CRISPRによる遺伝子修復を試みた.
    • 最適なgRNAを選択し、Cas9およびドナーとなる相同テンプレートの導入によって、反復配列が大きGCリッチであるにもかかわらずRPGR遺伝子のORF15領域修復を実現した.効率は13%であった.
    • 網膜疾患の患者細胞由来のiPSC(自家iPSC)の遺伝子を修復後に患者に移植する精密医療への道が拓けた.
  2. [レビュー] 嚢胞性線維症(CF)の精密医療 - 治療の現状とCRISPRが開いた精密医療への道:Victor Turcanu(King's College London)
    • CFの病態生理学、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の変異
    • 未成熟終止コドンのリードスルー;CFTR Potentiators;CFTR Correctors;併用療法;二重作用分子;遺伝子治療;CRISPR/Cas9による遺伝子修復の概要/長所/解決すべき課題
  3. [RESERCH HIGHLIGHT] 内在遺伝子を自在にトランス活性化する新奇プラットフォーム:Antonello Mallamaci(Laboratory of Cerebral Cortex Development)
    • 2015年7月にNucleic Acids Research 誌に発表された論文"Upregulating endogenous genes by an RNA-programmable artificial transactivator."の著者ら自身によるハイライト.
    • 新奇プラットフォームは、標的遺伝子を認識するRNAコファクターと転写を刺戟するアポ-トランスアクチベーターNMHV (Nuclear-localization-signal, multimerized-MS2 peptide, Hemagglutinin-antigen, Virion-peptide-16) で構成される.
    • 微生物由来CRISPRシステムと比較すると、大きさが7分の1と小型で、発現量は小さいが安定で生物学的効果を示す発現を誘起する.また、標的遺伝子がすでに転写されている細胞においてのみ機能する.
    • 新奇プラットフォームは、ハプロ不全の遺伝子の発現レベルを正常に復元するツールとして有用である.
  4. [レビュー] 遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法(locus-specific ChIP)によるゲノム機能の生化学的解析:藤井穂高 (大阪大学)
    • 著者らが開発したlocus-specific ChIP (以下、lsChIP)は、分子間相互作用を保持している状態で特定のゲノム領域を分離し、クロマチンに結合している分子を直接同定可能とする手法であり、遺伝子座へのタグ付けとアフォニティー精製で構成され、標的としたゲノム領域に結合している分子を同定するさまざまな手法と組み合わせることができる.
    • これまでに2種類のlsChIP法が開発されている: 
      ・ iChIP = insertional chromatin immunoprecipitation/挿入的クロマチン免疫沈降法 
      ・ enChIP = engineered DNA-binding molecule(ZFN, TALEN, CRISPR/Cas)-mediated ChIP
    • 2種類の手法の原理、両者の相補性、応用例(同定に成功した分子例)、およびオフターゲットの相互作用への対処をレビュー
  5. [論文] CRISP/Cas9システムの切断効率とsgRNAの配列との相関:内匠 透 (理研)
    • CRISPR/Cas9システムにおいて、sgRNAはCas9を標的へ誘導する役割とともに、Cas9を活性化する役割を担っている.この二重の役割故に、sgRNAsによってオンターゲットにおける切断活性が変動すると考えられる.
    • 今回、in vitro Surveyorアッセイによって218種類のsgRNAsの切断活性を測定し、PAMから遠位のヌクレオチドとPAM近位のヌクレオチドの双方が、オンターゲット切断効率と、強く相関することを見出した.
    • さらに、標的DNAのゲノムコンテクスト、GC%、およびsgRNAの二次構造が切断特性に決定的な影響を与えることを見出した.
  6. [RESEARCH HIGHLIGHTS] マラリアをドライブ・アウト:Tal Nawy (Etior)
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