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[出典] "RNA-activated protein cleavage with a CRISPR-associated endopeptidase" Strecker J, Demircioglu FE [..] Nishimasu H, Macrae RK, Zhang F. Science 2022-11-03. https://doi.org/10.1126/science.add7450;[著者所属] Broad Institute, McGovern Institute, 東大, 稲盛科学研究機構
 原核生物は、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)やCas(CRISPR-associated proteins)など、外来遺伝要素に対する多様な防御システムを備えている。CRISPR-Casシステムの主な機能は、RNAにガイドされるDNAまたはRNAに対するヌクレアーゼ活性による適応免疫の提供であるが、CRISPR遺伝子座と遺伝的に関連しつつ他の機能を帯びたタンパク質も同定されている。その一例がCRISPR-associated transposase(CAST)で、ヌクレアーゼ活性を伴わないCRISPR関連エフェクターがTn7様可動性遺伝要素を特定のDNA配列に誘導し、RNAガイド下でDNA挿入を行う。CASTシステムの進化過程に対する洞察から、多様なCRISPR関連エフェクターが他のバクテリアの酵素を獲得したり、獲得されたりする能力があることが示唆されている。CASTシステム以外にも、CRISPR-Casシステムと遺伝的に関連するシステムが明らかにされつつあり、今後も発見される可能性がある。
 先行研究において、CRISPR-Tタンパク質を切断する環状オリゴアデニル酸セカンドメッセンジャー(cA4)に反応するLonプロテアーゼなど、いくつかのRNA標的III型CRISPR関連プロテアーゼ(CASP)系が発見された(bioRxiv, 2021)。最近報告されたサブタイプIII-EエフェクターCas7-11(gRAMPとも呼ばれる)[*1, *2]も同様に、テトラトリコペプチドリピート (Tetratricopeptide repeat, TPRモチーフ)を含むCHATファミリーメンバー(TPR-CHAT、またはCsx29)であるプロテアーゼに関連している。
 Csm/Cmr複合体からなる典型的なIII型CRISPRシステムと対照的に、Cas7-11エフェクターは、自然に融合したCas7とCas11ドメインを含んでいる。CHATファミリーのプロテアーゼは触媒的なシステイン残基を持ち、プログラム細胞死に関与する真核生物のカスパーゼを含む。Cas7-11-Csx29はバクテリアにおいてカスパーゼとして機能し、ウイルス免疫をサポートすると想定されている[*1, *2]。特に、Candidatus Scalindua brodae 由来の Cas7-11 と Csx29 は安定なタンパク質複合体を形成することが示されたが[*2]、関連プロテアーゼの基質や機能は不明であった。
 本稿では、海洋性嫌気性生物Desulfonema ishimotonii 由来のIII-E型CRISPR関連プロテアーゼ(DiCASP)の基質、構造、機構を明らかにし、外来遺伝物質に対する転写反応を調整するその本来の機能を明らかにし、in vitroおよびヒト細胞内での新規RNAセンシングへの応用が可能なことを示した。
 [論文構成]
  • Cas7-11-Csx29複合体はCsx30タンパク質を切断する
  • Csx30によるタンパク質分解の特性評価
  • 標的RNA結合に伴うCsx29のアロステリックな活性化
  • Cas7-11-Csx29によるCsx30の認識
  • Csx30は転写因子CASP-σに結合し阻害する。
  • Csx30のプロセシングがCASP-σの転写活性を制御する
  • 哺乳類細胞におけるDiCASPのタンパク質切断活性の確認とRNAセンシングへの応用、およびCASPシステムの分子機序モデル:DiCASPを利用してHEK293T細胞においてCsx30タンパク質の切断を確認し、また、Csx30切断によって活性化されるエフェクタードメインを含むレポーターを設計し、Neuro2A loxP:GFP細胞におけるRNAセンシングを実現 (Fig. 5 RNA sensing applications and a proposed model for CASP systems 参照);タイプIII-E CASPシステムは、3種類の戦略で外来遺伝要素に対して宿主を防衛する (Fig. 5 の部分図 F 参照) - (1)RNAエンドヌクレアーゼCas7-11による標的RNA切断 /(2)Csx30-CASP-σによる転写応答 /(3)Csx31およびおそらくCsx30-Cによる第三の防御
 [構造情報]
  • 8EEX (inactive CASP) 
  • 8EEY (active CASP) 
  • EMD-28064 (inactive CASP, focused refinement of Cas7-11, crRNA, and Csx29 NTD)
  • EMD-28070 (inactive CASP, focused refinement of Csx29 TPR-CHAT)
  • EMD-28065 (active CASP, focused refinement of Cas7-11, except INS, crRNA, and target RNA)
  • EMD-28071 (active CASP, focused refinement of Cas7-11 INS)
  • EMD-28072 (active CASP, focused refinement of Csx29 NTD and TPR)
  • EMD-28073 (active CASP, focused refinement of Csx29 CHAT and Csx30). 
 [*]
  1. [ハイライト] 天の恵み Cas7-11: RNA編集ツールとして利用可能なタイプIII-E CRISPRシステム. https://crisp-bio.blog.jp/archives/27880485.html
  2. タイプIII-E CRISPR-Casシステムは面白い - クラス1とクラス2の境界を曖昧にする. https://crisp-bio.blog.jp/archives/27275702.html
 [参考]
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