[出典] "Leveraging a natural murine meiotic drive to suppress invasive populations" Gierus L, Birand A [..] Thomas PQ. PNAS. 2022-11-08. https://doi.org/10.1073/pnas.2213308119. [著者所属] U Adelaide
 ハツカネズミをはじめとするげっ歯類は、世界中に拡散し、環境破壊や農業生産性の低下を引き起こしている。特に、島嶼部では、在来種動植物に絶滅の危機をもたらしている。
 CRISPR-Cas9遺伝子編集技術をベースとする合成"ホーミング"遺伝子ドライブを介して侵入種を抑制する戦略が、昆虫種で実現されてきたが、マウスではホーミング遺伝子ドライブの開発は困難であった。オーストラリアの研究チームは今回、1927年に初めて報告されたtハプロタイプをベースにした遺伝子ドライブ"t CRISPR"を開発した。
 tハプロタイプは、野生マウス集団で一般的に見られる自然発生的な遺伝子ドライブ要素であり、雄の減数分裂ドライブとして機能するが、t CRISPRでは、tハプロタイプに組み込んだハプロサフィシェントな雌性繁殖遺伝子 (Prl )を標的とするCRISPRトランスジーンが、受胎可能な雌を徐々に減少させる。
 このアプローチを、現実的なパラメータを用いた島嶼集団のin silico モデリングと、実験用マウスを利用した概念実証実験にて検証した:
  • 島嶼集団モデリングは、根絶の可能性を示した。
  • Cas9とgRNAの発現を異なる染色体に組み込むスプリット型の遺伝子ドライブを利用して実験用マウスにてt CRISPRをテストした結果は、この戦略の実現可能性を示した。
 
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