In vitro およびin vivo でのミトコンドリアまたは核のDNAの編集を実現するコンパクトなZF-塩基エディターZF-DdCBE
[出典] "Compact zinc finger base editors that edit mitochondrial or nuclear DNA in vitro and in vivo" Willis JCW, Silva-Pinheiro P, Widdup L, Minczuk M, Liu DR. Nat Commun 2022-11-23 https://doi.org/10.1038/s41467-022-34784-7 [著者所属] Merkin Institute of Transformative Technologies in Healthcare (Broad Inst), Harvard U, HHMI, MRC Mitochodrial Biology Unit (U Cambridge) 
 Joseph D. Mougous (University of Washington School of Medicine)と今回の責任著者のDavid R. Liuが率いた研究チームは、2020年に、スプリット(二分割)することで無害化したB. cenocepacia由来シチジンデアミナーゼの触媒ドメイン (DddA) をベースにTALEアレイを利用して、CRISPR(dCas9/Cas9n)に依存しない塩基エディター DdCBEを開発し、ミトコンドリアDNAの塩基編集が可能なことを、報告していた [*1]
 その後、J. S. Kimらが、スプリット型DddAにZFアレイとUGIを融合したZFデアミナーゼ(ZFD)を報告した [*2]。ZFDは、in vitro でミトコンドリアや核のDNAの塩基編集を実現したが、その最適化は、ZF-DdCBE 1主に、ZFDを構成するドメインの順およびZFアレイとスプリット型DddAの一方とを連結するアミノ酸リンカーの長さの調整に限られていた。Liu研究チームは今回、in vivo での応用においても効率的な塩基編集を可能にするDdCBE開発を目指して、DdCBEのアーキテクチャー、ZFスキャフォールド、DddAデアミナーゼの構成要素全般に、見直した [Fig. 1 引用右図参照]。
 ヒト細胞において、2020年版のDbCBETALEリピート配列をZF配列に置き換えたv1のアーキテクチャーと比較して、ZF-DdCBE 3v7のアークテクチャーでは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の塩基編集効率が平均10倍向上し、ZFDに対しては平均3.6倍以上向上した [Fig. 2 引用右図参照]。一方で、オフターゲット塩基編集も顕著であった。核DNAの塩基編集も確認できたが、効率は、CBE/ABEよりも低かった。
 オフターゲット塩基編集をもたらす要因を分析した結果に基づいて、オフターゲット部位でのスプリット型DddAの再集合 (復元)を抑制する4種類の戦略を特定し、それらを統合することでオフターゲット塩基編集を低減し、mtDNAまたは核DNAのオンターゲット編集を効率的に行う高特異性ZF-DdCBEバリアントを設計した。
 ZF-DdCBEは小型 (約 2.5 kb)なため、単一のAAVキャプシドに内包させることで、マウスの生体内へ送達することが可能であり、事実、マウスの心臓、肝臓、骨格筋における効率的なミトコンドリア塩基編集(効率 40-60%)を達成した。しかし、ZF-DdCBEの生体内オフターゲット塩基編集のレベルは未だ臨床応用には高過ぎた。この課題は、ZF -DdCBEの更なる最適化や生体内への一過性送達を介して、解決できる可能性がある。
 [*] 引用論文と紹介crisp_bio記事
  1. "A bacterial cytidine deaminase toxin enables CRISPR-free mitochondrial base editing" Mok BY, de Moraes MH [..] Joseph D. Mougous JD, Liu DR. Nature 2020-07-08. https://doi.org/10.1038/s41586-020-2477-4;2020-07-11 (2022-11-13更新) シチジンデアミナーゼをTALEアレイに組み合わせてミトコンドリアDNAの塩基エディター 'DdCBE'を開発. https://crisp-bio.blog.jp/archives/23571615.html
  2. "Nuclear and mitochondrial DNA editing in human cells with zinc finger deaminases" Lim K, Cho SI, Kim JS. Nat Commun. 2022-01-18. https://doi.org/10.1038/s41467-022-27962-0;022-01-27 ジンクフィンガー・デアミナーゼ (ZFD)を用いたヒト細胞における核およびミトコンドリアDNAの塩基編集. https://crisp-bio.blog.jp/archives/28479400.html
 [注] 別記事CRISPRシステムに依存しない塩基エディター関連crisp_bio記事/論文リスト参照