[出典] "Enhanced mitochondrial DNA editing in mice using nuclear-exported TALE-linked deaminases and nucleases" Lee S, Lee H [..] Kim JS. Genome Biol 2022-10-12. https://doi.org/10.1186/s13059-022-02782-z [著者所属] Institute for Basic Science (Daejeon), KRIBB, Sungkyunkwan U, Chungbuk National U.
[背景]
Burkholderia cenocepacia 由来の細胞毒性を帯びたデアミナーゼの触媒ドメインDddAを無害化して塩基エディターDdCBEとして利用可能にしたDavid R. Liuらに始まり、本論文の責任著者であるJin-Soo Kimらなど、DdCBEを利用したミトコンドリアDNA (mtDNA) 編集の研究が急速に広がってきた [CRISPRシステムに依存しない塩基エディター関連crisp_bio記事/論文リスト参照]。
Jin-Soo Kimらは今回、マウス胚におけるmtDNAの編集効率の向上と、核ゲノムにおける望ましくないオフターゲット編集を回避することを試みた。
- DdCBEに核輸出シグナル(nuclear export signal: NES)を付加することにより、ミトコンドリアでの塩基編集効率を向上させ、核ゲノムでのオフターゲット編集を抑制できると推論し、マウス微小ウイルス (minute virus of mice)のNS2タンパク質に由来するNES配列(N′-VDEMTKKFGTLTIHDTEK-C′)をDdCBEのC-末端に付加したDdCBE-NESを作製した [Fig. 1 引用右図 a 参照 ]。
- 想定通りDdCBE-NESによってmtDNAの編集効率が向上したが、加えて、DdCBE-NESによる編集が進行しなかったmtDNAを標的とするTALEN (mitoTELEN) を併用することで、mtDNAの編集をさらに促進した。
- この2つのアプローチにより、ヒトのミトコンドリア遺伝性疾患に関連するMT-ND5遺伝子のm.G12918A変異を持つモデルマウスを作製するに至った。この変異マウスは、背を丸めた外見、腎臓や褐色脂肪組織でのミトコンドリアの損傷、海馬の萎縮を示し、短命であり、Leigh脳症、MELAS (mitochondrial encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes) 症候群、LHON (Leber hereditary optic neuropathy)-MELAS 重複症候群の動物モデルとして有用と考えられる。
DdCBE-NES と mitoTALENを併用するアプローチは、他のmtDNA変異動物モデルの作成と治療薬開発にも展開可能である。
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