2024-02-16 PASTE技術の臨床展開を目指すTome Bioscience社2.13億ドルを調達
[出典] News in Brief "Tome launches CRISPR tool for oversized DNA" Nat Biotechnol 202402-15. https://doi.org/10.1038/s41587-024-02152-z
 
 PASTEは、プライム・エディター (PE) にセリンインテグラーゼを組み合わせることで、大規模なDNA配列をゲノムの任意の位置に挿入可能とし、生体内での遺伝子修正を可能にする技術であり、Tome Biosicencesの共同設立者であるOmar AbudayyehとJonathan Gootenbergによって開発された。今回の投資は、Andreessen Horowitz, Arch Venture Partners, および富士フィルムが加わっている。

 Tome Biosciencesは当初、この技術の単因子肝疾患の遺伝子治療と自己免疫疾患の細胞療法への展開を目指す予定である。遺伝子治療では、PASTEは特定の変異を標的とすることはなく、変異型遺伝子に対して正常に機能する野生型遺伝子全体を挿入し、細胞療法では、正確な遺伝子座に人工遺伝子を追加するアプローチを取る。

 Tome Biosciencesは早々に、新興企業のReplace Therapeutics社を6500万ドル (最終的には1.85億ドル)で買収し、同社のレパートリーに新たなゲノム統合ツールを加えた。Replace Therapeuticsの技術はPASTEに似ているが、インテグラーゼの代わりに短いDNA配列を挿入するDNAリガーゼが使われている。

2023-04-27 特許の観点からPASTEと類似技術PASSIGEとの関係を論じたHuman Gene Therapy誌の記事を次のcrisp_bio記事で紹介:2023-04-27 プライム編集 (PE) をベースとするPASTEと PASSIGE (prime-assisted site-specific integrate gene editing) の特許を巡って.

2022-11-29 Nature Biotechnology論文に準拠した初稿
[注] DSB(Double-strand DNA break (cleavage) / 二本鎖DNA切断)
[出典] "Drag-and-drop genome insertion of large sequences without double-strand DNA cleavage using CRISPR-directed integrases" Yarnall MTN, Ioannidi EI, Schmitt-Ulms C, Krajeski RN [..] Abudayyeh OO, Gootenberg JS. Nat Biotechnol 2022-11-24. https://doi.org/10.1038/s41587-022-01527-4 (Received 2022-04-30 / Accepted 2022-09-23 / Published 2022-11-24) [著者所属] McGovern Institute for Brain Research at MIT, ETH Zürich(兼任) , MIT, NCBI, Integrated DNA Technologies, Synthego Corporation, U Massachusetts Chan Medical School, Yecuris Corporation, PhoenixBio USA Corporation, TriLink Biotechnologies LLC.
 ゲノム編集において、Casヌクレアーゼが誘発するDSBからのDNA修復を介さずに、大規模なDNAカーゴをゲノム上の標的領域に挿入することは、依然として未解決の課題である。Cas9ヌクレアーゼが誘導するDSBからのNHEJやHDRを介した手法では目的外の望ましくない編集結果がもたらされ、DSBを介さないBEやPEでは小規模な挿入 (< ~50 nt) や欠失 (< ~80 nt) に限られ、PEペアを利用する手法は1 - 5.6 kbのサイズで効率が低下し大規模な配列挿入を実現できない。
 米国の研究チームは今回、Cas9ニッカーゼと逆転写酵素およびセリンインテグラーゼを融合させたPASTE(programmable addition via site-specific targeting elements)により大規模 (〜36 kb)な配列の標的部位へのノックインが可能なことを、3種類のヒト細胞株、ヒト初代T細胞の複数の遺伝子座で実証した [Fig. 1 参照]。
 さらに、PASTEを強化するために、メタゲノムから25,614個のセリンインテグラーゼとその結合部位を探索・発見し、より高い活性と短い認識配列を持つオルソログを設計し、効率的な(〜最大20%の編集効率)プログラム可能な統合を実現した。
 PASTEは、従来のCas9ヌクレアーゼが標的部位に誘発するDSBからの相同組換え修復(HDR)過程や非相同性末端結合(NHEJ)を介した手法と同等以上の編集効率を示し、非分裂細胞や生体内で活性であり、検出可能なオフターゲット編集が少ないという特徴がある。
 PASTEは、DSBからのDNA修復経路に依存しない大規模かつ多重の遺伝子挿入を可能にし、ゲノム編集の可能性を拡大する。

[注] Nature Biotechnology誌New & Views記事が、Yarnallらの論文と同じくLarge serine recombinase (LSRs) をベースとするDurrantらの先行論文 [*] の手法を紹介している [それぞれの手法の概要が図1の b と a にまとめられている [Fig. 1: Improved tools for large-scale DNA insertions using large serine recombinases (LSRs)]
[出典] News & Views "Novel recombinases for large DNA insertions" Lampe GD, Sternberg SH. Nat Biotechnol 2022-11-24. https://doi.org/10.1038/s41587-022-01600-y [著者所属] Columbia U
 ウイルスやトランスポゾンなどの可動性遺伝因子(Mobile genetic elements : MGEs)は、進化の過程で、統合酵素(integrative enzymes)の膨大なレパートリーをコードしている。リコンビナーゼは、二本鎖切断やDNA修復経路に依存することなく、大きなDNA挿入を触媒するため、特に魅力的であるが、挿入活性が低い、プログラムできない、という2つの欠点がある。
 一般に利用されているLSRであるBxb1は、ゲノム付着部位(genomic attachment site / landing pad)を用意する必要があり、統合効率が低い(〜10%)。PhiX31などの他のLSRは、付着部位に似たヒトゲノム配列(シュードサイト)を標的可能であるが、これも統合効率が比較的低い。
 Durrantらは [*]、20万種類をこえるバクテリアゲノムのデータマイニングとHEK293細胞での候補LSRsの実験検証を組み合わせて、Bxb1よりも高い活性を持つ10の候補を特定した。その上で、これらの高効率リコンビナーゼがもたらす機能を調べるため、プールしたDNAライブラリーを1つのゲノム付着部位に1回で設置する概念実証実験を行った。この手法は、面倒なライブラリのクローニングやレンチウイルスの投与を必要としないため、機能ゲノミクス研究を促進する可能性がある。さらに著者らは、ヒトゲノム上の内因性シュードサイトを効率的に標的する他のLSRや、ヒト細胞への挿入効率がPiggyBacなどの最先端のトランスポザーゼに匹敵するマルチ標的LSRの特性も明らかにした。
 Yarnallらは、LSRをDavid Liuらが開発したPEと組みわせたPASTEによってLSRの弱点を克服した。PASTEは、リコンビナーゼとプライムエディター(それ自体はCas9ニッカーゼと逆転写酵素の融合)の融合、およびリコンビナーゼが認識するattB部位をコードする改変プライム編集ガイドRNA(pegRNA)を含む。こうして、付着部位の設置後、直ちに適合するattP部位を含むドナーDNAを組み入れることを可能にした。
 [*] 
2022-10-19 ヒトゲノムへの大規模なDNA配列の効率的組み込みを可能にするリコンビナーゼの探索と応用. https://crisp-bio.blog.jp/archives/30505490.html;"Systematic discovery of recombinases for efficient integration of large DNA sequences into the human genome" Durrant MG, Fanton A, Tycko J [..] Bassic MC, Bintu L, Bhatt AS, Hsu PD. Nat Biotechnol 2022-10-10. https://doi.org/10.1038/s41587-022-01494-w (Received 2021-11-09 / Accepted 2022-09-01 / Published 2022-10-10)