[出典] "Application of combined CRISPR screening for genetic and chemical-genetic interaction profiling in Mycobacterium tuberculosis " Yan MY, Zheng D, Li SS [..] Jin Q, Yang J, Sun YC. Sci Adv 2022-11-23. https://doi.org/10.1126/sciadv.add5907 [著者所属] Institute of Pathogen Biology, and Center for Tuberculosis Research (Beijing), Institute of Laboratory Animal Sciences (Beijing)
CRISPR-Casシステムによって機能ゲノミクスの研究が加速した。微生物の機能ゲノミクスにも、プール型CRISPRiスクリーニングが利用されてきたが、オペロン下流の遺伝子に対して極性を示し、sgRNAが非鋳型鎖を標的とする場合にのみ有効であり、また、小型の遺伝子では利用可能なPAM配列が限られているといった課題があった。CRISPR KOスクリーニングでは、sgRNAが鋳型鎖と非鋳型鎖の双方を標的とする場合にゲノムDNAに機能喪失変異を誘導し、CRISPRiの弱点を克服可能にするが、原核生物ではその編集効率が低いことから、著者らが知る限り、微生物の機能ゲノミクスに利用された例は無かった。
中国の研究チームは先行研究 [*] の成果を生かして、今回、結核菌(Mtb)を対象として、Streptococcus thermophilus Cas9 (Cas9Sth1) をベースとするゲノムワイドのCRISPRiスクリーニングと共に、CRISPR KOスクリーニングを実現した。
その結果、CRISPR KOとCRISPRiスクリーニングが相補的に機能し、Mtbの生育に必須な一連の遺伝子の同定、および、多剤耐性結核菌の治療に用いられベダキリン(Bedaquiline: BDQ)に対する耐性/感受性に関連する数十の遺伝子の同定に成功した。このスクリーニング結果を遺伝学的および化学的に解析することで、BDQ の作用機序を明らかにし、結核治療の最適化に利用できる遺伝子と化合物との相乗効果を同定するに至った。
CRISPR KOとCRISPRiを併用する複合スクリーニングは、他の微生物の機能ゲノミクスにも展開可能である。
[*] 著者らの関連先行論文
- "A CRISPR-Assisted Nonhomologous End-Joining Strategy for Efficient Genome Editing in Mycobacterium tuberculosis" Yan MY, Li SS, Ding XY, Guo XP, Jin Q, Sun YC. mBio 2020-01-28. https://doi.org/10.1128/mBio.02364-19
コメント