[注] CRISPR関連トランスポゾン (CRISPR-associated transposons: CASTs)
[出典] "Structural basis for the assembly of the type V CRISPR-associated transposon complex" Schmitz M, Querques I [..] Jinek M. Cell 2022-11-25. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.11.009 [著者所属] U Zurich
[構造情報]
PDB 8BD5/EMD-15975 Cas12k-sgRNA-dsDNA-S15-TniQ-TnsC transposon recruitment complex
PDB 8BD6/EMD-15976 Cas12k-sgRNA-dsDNA-TnsC non-productive complex
PDB 8BD4/EMD-15974 TniQ-capped TnsC filament complex
 V-K型CRISPR関連トランスポゾン (CAST[*]は、Jinek Grapihcal abstractCas12k、AAA+ ATPase TnsC、Zn-finger protein TniQ、トランスポザーゼTnsBの協働に依存することが知られている。Jinekが率いる研究チームは今回、クライオ電顕法により、RNA誘導型Cas12k、TniQ、高分子TnsCフィラメント、そして予想外にリボソーム蛋白質S15からなる標的DNA結合型Cas12k-トランスポゾン・リクルーメント複合体の構造を明らかにし [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]、V-K CASTの分子機序モデルを提唱した [Figure 7から引用した左下図参照] :
CAST Figure 7
  • crRNA-tracrRNA二重ガイドRNAと結合したCas12kは、最初に標的DNAと結合し、部分的なR-ループ構造を形成する。
  • S15、TniQ、TnsCの関与によって、完全なR-ループが形成される。
  • TniQはtracrRNAの特定の領域を認識し、最初の2つのTnsCプロトマーを橋渡ししてTnsCフィラメントの重合を促進する。
  • リボソームタンパク質S15は、tracrRNAおよびCas12kと相互作用することにより、複合体の形成を促進する。
  • TnsCフィラメントはTnsBをリクルートするプラットフォームとなり、TnsCが解重合され挿入部位を露出させ、トランスポゾンのDNA挿入を触媒する。
 今回の研究により、CRISPRトランスポゾンのRNAを介した組み立てに関わる重要なメカニズムが明らかになり、大きなDNAを部位特異的に挿入するためのプログラム可能なツールとして、その開発が促進されることが期待される。
[crisp_bio注] このところ、CAST関連の論文が比較的高頻度で刊行されているが、CASTについてこれまで得られた知見が、今回のJinek論文のIntroductionに手際良くまとめられている。
 
 [Jinekらの先行論文]
 [*]