crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2022-12-08 更新 Molecular Cell 誌の論文紹介記事の書誌情報とリンクを追記:
比較的最近発見されたCRISPR-Casサブタイプを代表する小型のCRISPR-Cas12mエフェクターを、"DNAに結合するが切断せずに転写を抑制する"として紹介
[出典] Preview "Thou shalt not cleave DNA—only repress transcription: A compact Cas protein representing a new CRISPR-Cas subtype" Mahata T, Qimron U. Mol Cell. 2022-12-01. https://doi.org/10.1016/j.molcel.2022.10.021 [著者所属] Tel Avid U.
 Wuらが、DNAを切断せず、転写を抑制するコンパクトなCasタンパク質であり、CRISPR-Casの新たなサブタイプV-Mのプロトタイプタンパク質であるCas12mの特徴を明らかにした。
2022-12-03 初稿
[出典] "
The miniature CRISPR-Cas12m effector binds DNA to block transcription" Wu WY, Mohanraju P [..] van der Oost J. Mol Cell 2022-11-24. https://doi.org/10.1016/j.molcel.2022.11.003 [著者所属] Wageningen U and Research, Helmholtz Institute for RNA-based Infection Research, Arbor Biotechnologies (USA), NCBI/NLM, Erasmus U Medical Center, U Würzburg;グラフィカルアブストラクト 
 オランダ、ドイツ、米国の研究チームは今回、CIRPSR-CasシステムのV-Mサブタイプを代表するエフェクタータンパク質Cas12mの特徴を分析した [*]
  • Cas12mはCas12aの半分以下のサイズ (596 aa)にもかかわらず、crRNAガイドの自動処理を触媒し、5′-TTN′プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識し、tracrRNA不要でcrRNAに相補的な二本鎖DNA(dsDNA)に安定的に結合する。
  • しかし、Cas12mのRuvCドメインは非正規な触媒部位を帯びており、標的dsDNAをガイドRNA依存で切断することはない。
  • 一方で、Cas12mは、標的dsDNAへの高い結合親和性を介して、外来プラスミドに対して、その核酸の転写や複製を抑制することで干渉し、宿主バクテリアを保護する。
  • Cas12mのこうした特性をもとに、シチジンデアミナーゼと融合させること、明確な編集ウィンドウ内での塩基編集を実現する塩基エディター'dCas12m-CBE1'を構築した [Figure 7参照 ]。

[*]
Cas12ファミリー解説
タイプV CRISPRシステムのエフェクターの系統図 Figure S1参照 (Supplemental informationの3ページ目);出典のIntroductionの一部を以下に引用 (テキスト内は出典の引用論文)
 Cas12a(当初はCpf1と呼ばれた;Makarovaら, 2015Schunderら, 2013)の発見後、このヌクレアーゼ(Fonfaraら, 2016Zetscheら, 2015)および他のタイプVシステムのサブタイプからのホモログ(Cas12bおよびCas12c;Shmakovら, 2015)の構造・機能解析からcrRNA誘導型DNA干渉の機構が明らかになった。
  • 拡大し続けるゲノムおよびメタゲノムのデータベースをスクリーニングすることによって、最初に5つの小さなCas12バリアントが発見された(V-U1〜V-U5;Shmakovら, 2017年)。
  • これらの小さなバリアントのうちの2つの特徴が明らかにされた:Cas12f(V-U3、Cas14abcとも呼ばれる;Harringtonら, 2018Karvelisら, 2020)およびT7様トランスポゾンに関連する、触媒的に不活性なCas12k(V-U5;Streckerら, 2019)である。
  • さらに、その後、6つの新しいサブタイプが発見され、特徴が明らかにされた。Cas12d/Cas12e(当初はCasY/CasXと命名された;Bursteinら, 2017)、Cas12g/Cas12h/Cas12i(Yanら, 2019a)およびファージ由来のCas12j(CasΦ;Pauschら, 2020
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット