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2026-05-11 Phys.orgが配信したニュース記事のタイトルが当ブログのタイトルよりも遥かに良かったので、ここに引用します:この抗CRISPRタンパク質は, 細菌のタンパク質合成ラインを止めます"This anti-CRISPR stops the protein assembly line in bacteria" UCSF. Phys.org 2026-05-08. https://phys.org/news/2026-05-anti-crispr-protein-line-bacteria.html
2026-05-02 Nature 誌査読論文の書誌情報などを追記し、テキストも改訂しました。
2022-12-06 bioRxiv プレプリントに準拠した初稿

 細菌は、バクテリオファージ(ファージ)やその他の可動遺伝因子のDNAを認識して切断するCRISPR-Casを含む多様な防御システムをコードしています [#1]。これに対し、ファージは、DNA結合または切断を阻害することでCRISPR-Cas活性を阻害する抗CRISPR(Acr)タンパク質をコードしています [#2]。Acrタンパク質の抗CRISPR機構が多様であることはよく知られていますが、UCSFのJoseph Bondy-Denomy教授とペンシルベニア大学のNicole D. Marino助教授を共同責任著者とするNature 誌刊行論文で、また、新たな抗CRISPR機構が紹介されています。

[詳細] 抗CRISPR AcrVA2は, Cas12aの生合成を阻害することで抗CRISPR性を発揮する

 これまで知られているAcrタンパク質のほとんどは、CRISPR-Casシステムのリボ核タンパク質(RNP)複合体に直接結合して標的結合や立体構造活性化を阻害することでCRISPR-Casの標的核酸切断を阻害する一方、酵素的にRNPを修飾するものもあります[#3, 4]。例えば、広範囲阻害剤であるAcrVA1は、Cas12aのCRISPR RNA(crRNA)を切断することでCas12aを不活性化します [#5, 6]AcrVA1は、別のCas12a阻害剤であるAcrVA2の隣にコードされています。AcrVA2は非常に大きく(約37 kDa)、多様な細菌群の可動遺伝因子上に広く分布しています [#7;Nicole D. MarinoとJoseph Bondy-Denomyらによる成果] AcrVA2は細菌中のMoraxella bovoculi Cas12a(MbCas12a)を強力に阻害しますが、ヒト細胞では阻害しません。しかし、AcrVA1の抗CRISPR機構が同定されたのに対して、AcrVA1の抗CRISPR機構は不明でした。
 本研究では、AcrVA2が多様なCas12aホモログに存在する保存されたN末端モチーフを標的とし、Cas12aの生合成を阻害することで、選択的なcas12a mRNAの分解を誘導することが示されています。
 M. bovoculi は遺伝子操作が困難であるため、その本来の宿主におけるAcrVA2のメカニズムを研究することが困難でした。そこで、Pseudomonas aeruginosa PAO1株に、プラスミド上のAcrVA2と、染色体上のMbCas12aまたはLachnospiraceae 細菌由来Cas12a(LbCas12a)を発現するように遺伝子操作を加えました。これらのCas12aはアミノ酸配列の相同性が35%であり、それぞれ異なる誘導性プロモーターから発現されました。 
 AcrVA2は、両方のCas12aホモログによるファージ標的化を阻害し、ヌクレオチド配列の相違にもかかわらず、それらのタンパク質およびmRNAレベルを低下させました。AcrVA2およびAcrVA2.1(84%の相同性を持つオルソログ)によるMbCas12aおよびLbCas12aのダウンレギュレーションの程度は、両方のオルソログを阻害する能力とよく相関していました(例えば、AcrVA2.1はLbCas12aに対して活性が低い)。
 AcrVA2は、Cas12aのN末端付近の保存された機能的に重要なアミノ酸残基に結合し、翻訳中のcas12a mRNAの選択的分解を引き起こし、Cas12aの生合成を阻害します。さらに、AcrVA2のC末端ドメインの保存された残基は、リボソームおよびポリソームとの共沈(coprecipitation)を可能にし、標的となる共翻訳mRNAの分解に寄与します。
 AcrVA2のホモログは広く分布し、その特定な残基は保存されていることから、この新しい遺伝子制御機構は原核生物に広く存在し、様々な形態の微生物および分子拮抗作用に利用される可能性があります。
 M. bovoculi ファージがとっているCRISPR-Casのターゲッティング(すなわちAcrVA1)と生合成(すなわちAcrVA2)の双方を阻害する二重の戦略は、ファージが感染中に生き残り、バクテリア宿主と安定した共存を維持することを可能にすると思われます。
 
 [#] 関連crisp_bio記事と論文
  1. crisp_bio 2026-05-02 [レビュー] 原核生物の防御システム:多様性と進化的な適応. 
  2. 2024-01-30/Apr. "Inhibitors of bacterial immune systems: discovery, mechanisms and applications" Mayo-Muñoz D, Pinilla-Redondo R, Camara-Wilpert S, Birkholz N, Fineran PC. Nat Rev Genet. 25, 2370254. 
  3. crisp_bio 2020-03-22 [レビュー]抗-CRISPRタンパク質 (Acrタンパク質) 
  4. crisp_bio 2023-04-04 [レビュー] CRISPR-Casシステムに抗するファージ:タイプV 抗CRISPRの発見と機構. 
  5. crisp_bio 2019-04-03 Cas12aエフェクタに対抗するanti-CRISPRタンパク質 (Acrs)の独特な阻害機構
  6. CRISPRメモ_2019/06/05 [第4項] タイプV-A anti-CRISPRタンパク質 (AcrVAs)がCRISPR-Cas12aを阻害する構造基盤. 
  7. crisp_bio 2018-09-08 抗CRISPR (Acr)タンパク質:CRISPR-CasシステムのタイプIとタイプVに抗するタンパク質 (Acrs) 12種類を発見;"Discovery of widespread type I and type V CRISPR-Cas inhibitors" Marino ND* [..] Bondy-Denomy J. Science 362, 240–242 (2018)  [* 当時はUCSF所属]
[出典]
  • "Translation-dependent downregulation of Cas12a mRNA by an anti-CRISPR protein" Marino ND, Talaie A, Carion H [..] Bondy-Denomy J. (bioRxiv 2022-11-30) Nature2026-04-29. https://doi.org/10.1038/s41586-026-10440-8 [著者所属] UCSF (Dept Microbiology and Immunology; Dept Bioengineering and Therapeutic Sciences; Quantitative Biosciences Institute) (米国), University of Pennsylvania (Dept Pathology, Gladstone Infectious Disease Institute, Helmholtz Centre for Infection (ドイツ), University of Basel (Biozentrum) (スイス)
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