[出典] "Broadly applicable and accurate protein design by integrating structure prediction networks and diffusion generative models" Watson JL, Juergens D, Bennett NR, Trippe BL, Yim J [..] Baker D. Preprint from Baker Lab. https://www.bakerlab.org/wp-content/uploads/2022/11/Diffusion_preprint_12012022.pdf [著者所属] U Washington, Columbia U, MIT, Seoul National U, HHMI.
タンパク質工学において近年、深層学習手法が、配列、機能部位のスキャフォールド、新しいモノマー、環状オリゴマー、および抗体ループの設計にかなりの可能性を示してきた。しかし、標的分子に結合するバインダーのde novo 設計や対称性の高いタンパク質の設計を含む幅広い設計を実現できる一般的なフレームワークは未だ登場していない。
画像生成や言語生成のモデリングで大成功を収めた拡散モデル (diffusion model)も、タンパク質モノマー生成に適用されたが、タンパク質設計における成功は限定的であった。これは、タンパク質の主鎖の幾何学的構造の複雑さや配列と構造のと関係の複雑さがもたらしたものと考えられる。
David Bakerらは今回、強力な構造予測手法を拡散ノイズ除去ネットワーク(diffusion denoising networks)として利用することで、拡散モデルが学習したタンパク質表現を活用できることを示した。
すなわち、無条件およびトポロジー制約のあるタンパク質モノマーの設計、タンパク質およびペプチドのバインダー設計、対称性オリゴマーの設計、酵素活性部位のスキャフォールドの設計、治療および金属結合タンパク質の設計のための対称性モチーフ・スキャフォールドの設計に、利用可能なことを示した。
RoseTTAFold Diffusion (RFdiffusion) と命名したこの手法の性能と汎用性を、何百もの新しい設計を実験的に特徴づけることによって実証した。そのハイライトとして、副甲状腺ホルモンに対してピコモルの結合親和性を示すバインダーの設計の際に、実験的に最適化する前に、計算機で設計した結合性よりもかなり高い親和性を示したこと、また、これまで観察されなかった一連の対称的な集合体を電子顕微鏡で実験的に確認されたこと、を挙げる事ができる。
RFdiffusionは、大成功を収めた「ユーザーが指定した入力から画像を生成するネットワーク」を彷彿とさせるように、単純な分子仕様から多様で複雑なタンパク質構造や機能を設計することを可能にする。
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