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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Superior Fidelity and Distinct Editing Outcomes of SaCas9 Compared to SpCas9 in Genome Editing" Yang Z, Fu Y [..] Zhang J, Zhang X. Genomics Proteomics Bioinformatics 2022-12-20. https://doi.org/10.1016/j.gpb.2022.12.003 [著者所属] Institute of Hematology & Blood Diseases Hospital (Tianjin), Center for Stem Cell Medicine (Tianjin), Peking Union Medical College (Tianjin).
 SaCas9 (1053 aa; NNGRRT PAM) は、SpCas9 (1368 aa; NGG PAM) に対してサイズが小さくより高い特異性でDNAを標的可能なことが知られているが、スペーサーの長さがオンターゲット活性、オフターゲット活性、インデルパターン、およびHDR編集に与える影響について比較検討されたことはない。
 中国の研究チームは今回、ヒトiPS細胞およびK562細胞において、臨床応用が期待される11種類の標的部位について、SaCas9とSpCas9の編集活性を厳密に比較した。
  • プロトスペーサーの長さが異なるsgRNA(SpCas9は18-21 nt、SaCas9は19-23 nt)によって誘導される両者のヌクレアーゼ活性を系統的に検討した結果、SaCas9の方がSpCas9よりも高いヌクレアーゼ活性を示した。
  • また、SaCas9の編集はスペーサー長に敏感であり、21 ntまたは22 ntのsgRNAが最も効果的であることを発見した。また、PAMがNNGGATでない場合、SaCas9はSpCas9より強力であった。
  • さらに、SpCas9はSaCas9よりも、PAM配列の上流4塩基目 (-4位) での非相同末端結合 (NHEJ) を介した1塩基挿入(NHEJ+1) [*] により大幅な偏りを示し、二本鎖オリゴデキシヌクレオチド(dsODN)挿入やAAVドナーのHDRインテグレーションを阻害する傾向を示した。
  • 最後に、GUIDE-seq解析により、SaCas9はSpCas9と比較してかなり高い忠実度を示した。
 本研究は、SaCas9がヒトゲノムの操作や臨床的な遺伝子治療において優れたヌクレアーゼであることを実証している。
 
[*]
"Dynamics and competition of CRISPR–Cas9 ribonucleoproteins and AAV donor-mediated NHEJ, MMEJ and HDR editing" Fu YW, Dai XY, Wang WT [..] Zhang L, Cheng T, Zhang XB. Nucleic Acids Res. 2021-01-04. https://doi.org/10.1093/nar/gkaa1251;2021-01-06 CRISPR-Cas9 RNPとAAVドナーを介したNHEJ, MMEJおよびHDR編集のダイナミクスと競合. https://crisp-bio.blog.jp/archives/25240600.html
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