[出典] "An efficient CRISPR interference-based prediction method for synergistic/additive effects of novel combinations of anti-tuberculosis drugs" Samukawa N, Yamaguchi T, Ozeki Y et al. Microbiology 2022-12-19. https://doi.org/10.1099/mic.0.001285 [著者所属] 阪大, 感染研, 新潟大, U Airlangga (Indonesia), 微化研
結核の治療は、複数の抗結核薬を用いる化学療法で、標準的なコースでも6カ月に及ぶ長期にわたる。抗菌薬耐性の出現を防ぐ観点から、主要な抗結核薬との併用による相乗的あるいは相加的な効果(コンビナトリアル効果)を利用して治療の期間短縮に貢献するような新規抗結核薬が求められている。しかし、コンビナトリアル効果は、薬剤開発のリード化合物を同定する段階まで予測することができない。一方で、標的遺伝子の特異的ノックダウンを実現するCRISPRiは、新規創薬標的のハイスループットなスクリーニングを可能にする強力な遺伝子ツールであり、抗結核薬の開発も、CRISPRiによって加速されることが期待される。
本研究では、主要な抗結核薬と新規標的の阻害剤とのコンビナトリアル効果の予測スクリーニングにCRISPRiが適用可能かどうかを検討した。チェッカーボードアッセイでは、イソニアジドはリファンピシンまたはエタンブトールとの組み合わせで、それぞれ相乗的または相加的にMycobacterium smegmatis を死滅させることが確認された。
イソニアジドの標的分子をコードするinhA をノックダウンすると、リファンピシンおよびエタンブトールに対する感受性が上昇した。さらに、リファンピシンの標的分子をコードするrpoBをノックダウンすると、チェッカーボードアッセイでリファンピシンと相乗的に作用するイソニアジドとエタンブトールに対する感受性が増加した。
さらに、CRISPRiは、新規結核治療薬候補であるcyclomarin Aとイソニアジドまたはリファンピシンとの相乗作用を予測することに成功した。
これらの結果は、CRISPRiが創薬標的探索だけでなく、新規抗結核薬の組み合わせによるコンビナトリアル効果のスクリーニングにも有用なツールであることを示すものである。
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