[注] ゲノムマイニング(genome mining https://en.wikipedia.org/wiki/Genome_mining):天然物の生合成経路やその相互作用の発見を目的としてゲノム情報を活用することを意味する
[出典] "Multiplex Base-Editing Enables Combinatorial Epigenetic Regulation for Genome Mining of Fungal Natural Products" Zhao F [..] Gas X. J Am Chem Soc. 2022-12-21. https://doi.org/10.1021/jacs.2c10211 [著者所属] Rice U, East China Normal Uグラフィカルアブストラクト
 糸状菌のゲノムマイニングは、その複雑な遺伝子制御のために、依然として困難である。エピジェネティック修飾が、真菌の遺伝子転写の制御にしばしば協調的に作用することを示す証拠が増えつつあるが、目的に応じて複数の遺伝子を同時に操作するツールは極めて限られている。
 Rice大学を主とする研究チームは今回、真菌のゲノム操作の能力とスループットを大幅に向上させるマルチプレックス塩基編集(multiplex base-editing: MBE)のプラットフォームを開発し、Aspergillus nidulans において1回の形質転換で最大8遺伝子を同時に不活性化することに成功した。
 その結果、3種類のネガティブなエピジェネティックレギュレーターを複合的に不活性化することにより、野生株においてサイレンスされていた8種類の遺伝子クラスターを活性化させることに成功した。また、これまでに報告されていないユニークなcichorineとポリアミンのハイブリッドな化学的足場を帯びた新規な天然物の一群を同定した。
 このスケーラブルで効率的な MBE プラットフォームは、他の糸状菌の新規 NPs のゲノムマイニングに容易に適用でき、菌類の化学的多様性を利用するための強力なアプローチとなると想定される。