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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "CRISPR prime editing for unconstrained correction of oncogenic KRAS variants" Tang G, Kweon J, Kim Y. bioRxiv 2022-12-22 [プレプリント] https://doi.org/10.1101/2022.12.21.521522 [著者所属] U Ulsan College of Medicine
 KRAS は最もよく変異するRASファミリー遺伝子であり、いくつかの種類のがんを発生させ、長年にわたり、undruggableとされてきたがん原遺伝子である。近年、KRAS 変異に対するSotorasib(ソトラシブ)などの分子標的薬が承認され始めたが、韓国の研究チームは今回、PEによりKRAS におけるG12およびG13のすべてのタイプの発がん性KRAS 変異を修正できるユニバーサルpegRNAを開発した [PE2-SpG, PE3b-SpG, PEmax-SpG-P2A-hmLH1 (PE5max-SpG); pegRNA [*1];epegRNA [*2]を使用]。
 このユニバーサルpegRNAを組み込んだPEを用いて、HEK293T/17細胞において、既知のKRAS変異の~94%を占める12種類のKRAS変異(アミノ酸G12とG13におけるミスセンス変異)を最大54.7%の修正効率で修正することに成功した[Figure 2引用左下図参照] 。
PE2   2022-12-26 11.21.54
また、膵臓がん細胞(ASPC-1とCFPAC-1)における内在性KRASに対しても、G12VおよびG12DのKRAS変異を、オフターゲット変異を帯びていない野生型KRAS配列に最大18.7%の修正効率で修正することに成功した [FIgure 3引用右上図参照]。
 これらの結果から、ユニバーサルpegRNAによるPEは、KRAS 発がん性変異に対する「1対多」の治療戦略として可能性があると考えられる。
 
[*] 引用crisp_bio記事と論文
  1. 2021-03-02 PEの標的可能領域をNGG以外のPAMを認識するSpCas9変異体により拡大. https://crisp-bio.blog.jp/archives/25718870.html;"Engineered Prime Editors with PAM flexibility" Kweon J [..] Kim Y. Mol Ther 2021-02-23. https://doi.org/10.1016/j.ymthe.2021.02.022
  2. 2021-10-15 PEの編集効率を,pegRNAを改変することで改善. https://crisp-bio.blog.jp/archives/27671344.html;"Engineered pegRNAs improve prime editing efficiency" Nelson JW, Randolph PB [..] Liu DR. Nat Biotechnol. 2021-10-04. https://doi.org/10.1038/s41587-021-01039-7 
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