[出典] "Safeguarding genome integrity during gene-editing therapy in a mouse model of age-related macular degeneration" Yin J, Fang K, Gao Y [..] Yang H, Hu J. Nat Commun. 2022-12-22. https://doi.org/10.1038/s41467-022-35640-4 [著者所属] Peking U, Shanghai Institutes for Biological Sciences, Fudan U, Affiliated Hospital of Guizhou Medical U.
 中国の研究チームが、加齢黄斑変性症(AMD)マウスモデルにおけるCRISPR/Cas9システムによるVegfa   遺伝子編集治療において、野生型Cas9に代えて先行研究で開発していたCas9TX [*1]を利用することで、野生型および高精度型Cas9による遺伝子編集に伴って〜1%に頻度で発生する染色体転座の抑制に成功した。
 近年、AMD治療のためにVEGFA  をターゲットとするCRISPR-Casシステムが展開されている。中でもCas9とsgRNAを、レーザー誘発脈絡膜血管新生(choroidal neovascularization: CNV)モデルマウスに、リボ核タンパク質(RNP)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)を介して網膜下に注入することにより、マウス眼内での血管新生を効率的に抑制可能なことが、複数のグループによって報告されてきた。
 一方で、Cas9は、培養ヒト初代T細胞およびマウス胚性幹細胞において、約1~3%の頻度で染色体転座を誘発し、さらに293T細胞では転座レベルが1~10%と高くなることが報告されている [*2]
 研究チームは今回、Cas9誘発染色体転座頻度がマウス眼内でも約1%あり、また、転座が生体内で12 週間以上持続することを見出した。また、AAVによる投与の場合は、AAV断片のインテグレーションが高頻度で見られた。そこで、Cas9ヌクレアーゼによるDNAの繰り返し切断を抑制することで、編集細胞における染色体転座をex vivoで効率的に除去することを実証したCas9TXのin vivo 編集への応用を試みた。
 Cas9TXAMDマウスモデルにスプリット型AAVで投与したCas9TXは [Fig. 2引用右図参照]、AMD治療効果を示しつつ、Cas9に比較して、染色体転座を大幅に抑制され、加えて、標的部位へのAAV断片の組み込みも阻害されることを見出した。
 Cas9TXは、in vivo遺伝子編集にCas9に代わる優れた選択肢である。
 
[*] 引用crisp_bio記事と論文
  1. 2022-03-15 CRISPR-Cas9ゲノム編集に伴う染色体転座を,Cas9にTREX2を融合することで、解消. https://crisp-bio.blog.jp/archives/28866516.html;"Cas9 exo-endonuclease eliminates chromosomal translocations during genome editing" Yin J, Lu R, Xin C [..] Hu J. Nat Commun. 2022-03-08. https://doi.org/10.1038/s41467-022-28900-w
  2. 2022-12-30 CRISPR-Cas9利用時にはDSBからの修復がもたらす有害な副産物に注意. https://crisp-bio.blog.jp/archives/25659895.html;"Global detection of DNA repair outcomes induced by CRISPR-Cas9" Liu M, Zhang W, Xin C [..] Hu J. (bioRxiv 2021-02-16).  Nucleic Acids Res 2021-09-07. https://doi.org/10.1093/nar/gkab686