crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Comprehensive prediction of robust synthetic lethality between paralog pairs in cancer cell lines" Cell System paralog SLsDe Kegel B, Ryan CJ. Cell Systems 2021-09-15. https://doi.org/10.1016/j.cels.2021.08.006 [著者所属] U College Dublin, Wellcome Sanger Institute;右図引用グラフィカルアブストラクト参照 
 De Kegelらは、がん遺伝子のパラログペア間のロバストな合成致死(synthetic lethality: SL)を予測する22の特徴を特定し、これらの特徴を用いて、〜36,600件のヒト遺伝子パラログペアを対象として、解釈可能なSL予測を生成するアンサンブル分類器を開発した。
 研究チームははじめに、既存のコンビナトリアル・スクリーンには、スクリーニングの対象とされたペアに偏りがあり、これらのスクリーニングからのヒットが、主に細胞株特異的であることを明らかにした。
 続いて、Cell System paralog SL Figure 2 17.17.03これらの制限に対処するために、DepMapプロジェクト(crisp_bio 2021-03-18更新)からの762種類のがん細胞株におけるゲノムワイドCRISPRスクリーニングと分子プロファイリングデータを統合して、偏りのないSL(および非SL)パラログペアのデータセットを導出した [Figure 2引用右図参照]。一連のSLは複数の細胞株にわたって同定されていることから、遺伝的な不均一性に影響されない可能性が高く、細胞株特異的な効果である可能性も低い。
 次に、このデータセットにおいて、パラログペアの様々な特徴がSLペアと非SLペアを区別する能力を評価し、タンパク質間相互作用(PPI)や進化的保存性など、SL関係を予測するいくつかの特徴を同定した。
 こうして同定した特徴をランダムフォレスト分類器によりアンサンブル分類器へと統合し、今回構築した偏りのないパラログペアのデータセットにおいて、アンサンブル分類器が、個々の特徴に基づく予測値より大幅に優れていることを示した。
 さらに、このアンサンブル分類器は、4つの独立したコンビナトリアルCRISPRスクリーニングから得られたコンセンサス結果を正確に予測した。
 加えて、このアンサンブル分類器により、細胞株特異的なSLと頑健なSLの識別が可能なことを示した。また、すべてのパラログペアについて、特定のペアがSLである可能性が高い根拠を提示することが可能なことも示した。
 今回発見した2種類のSLペア、ASF1A/ASF1BとCOPS7A/COPS7B、については実験検証も行なった。
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