- 腫瘍の直接死滅と抗腫瘍免疫を同時に実現する二機能性がん細胞ワクチン開発 -
[出典] "Bifunctional cancer cell–based vaccine concomitantly drives direct tumor killing and antitumor immunity" Chen K-S [..] Shah K. Sci Transl Med 2023-01-04. https://doi.org/10.1126/scitranslmed.abo4778 [著者所属] Brigham and Women's Hospital, Dana-Farber Cancer Institute, Massachusetts General Hospital, Harvard Stem Cell Institute
 がんワクチンの研究において、不活性化した腫瘍細胞を投与すると、強力な抗腫瘍免疫反応が誘導されることが明らかにされてきたが、この現象のがん治療へ応用は、限られた臨床効果しか示さなかった。米国の研究チームは今回、生きた腫瘍細胞が腫瘍を追跡し、標的化する能力を有していることに注目し、直接的な腫瘍の死滅と免疫賦活化の機能を持つ全 (whole) 癌細胞をベースとする治療法を開発した。
 CRISPR-Cas9遺伝子編集技術によってIFN-β特異的受容体をノックアウトすることにより、インターフェロンβ(IFN-β)感受性から耐性へと腫瘍細胞を改変し、続いて、免疫調節因子であるIFN-βと顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を放出するように改変した。
 この治療用腫瘍細胞(therapeutic tumor cells: ThTC)は、カスパーゼを介したがん細胞のアポトーシスの誘導、がん関連線維芽細胞発現の血小板由来成長因子受容体βの低下、抗腫瘍免疫細胞のトラフィッキングと抗原特異的T細胞活性化シグナルの活性化により、マウスにできたグリオブラストーマ腫瘍を消滅させた。
 このメカニズムに基づくThTCの有効性は、免疫不全マウスおよびヒト化マウスの原発性、再発性、転移性がんモデルにおいて、生存率の向上と長期的な免疫力をもたらした。また、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼとラパマイシン活性化カスパーゼ9からなるダブルキルスイッチをThTCに組み込むことにより、安全性を確保した。
 二機能性治療薬において、天然のネオ抗原が豊富な腫瘍細胞を武装させることは、固形腫瘍に対する有望な免疫細胞療法であり、臨床応用への道を拓くアプローチである。