[出典] "Dystrophin myonuclear domain restoration governs treatment efficacy in dystrophic muscleMorin A, Stantzou A [..] Amthor H. PNAS 2023-01-10/2023-01-03. https://doi.org/10.1073/pnas.2206324120 [著者所属] Evolution of Neuromuscular Diseases - Innovative Concepts and Practice (END-ICAP), Royal Veterinary College, SQY Therapeutics, Charité-Universitätsmedizin Berlin, Berlin Institute of Health, Généthon, Université Paris-Saclay, Centre scientifique de Monaco, Sorbonne U.
 ジストロフィンは、筋肉の健康維持に不可欠な分子であり、そのサルコレンマ(筋線維膜)の欠損によって、X連鎖DMDを引き起こす。しかし、その正常な空間構造はまだ十分に解明されておらず、治療効果の解釈の妨げになっている。
 フランス、英国、ドイツ、モナコの研究チームが、蛍光標識ジストロフィン(Dmd<EGFP>)のヘテロ接合で保持した雌のレポーターマウスを用いて、ジストロフィンの分布が予想外に区画化されており、研究チームがbasal sarcolemmal dystrophin units (BSDUs)と称することになる、約80μmの筋核(myonuclear)領域に局在することを見出した。
 これらのBSDUが正常な筋では、ジストロフィンの連続分布とそれに伴う筋線維の保護を確実にするために重なっており、BSDUはさらに、より大きな物理的要求を満たすと考えられる筋腱接合部に局在しており、そこにはDmd 転写物とジストロフィンタンパク質の双方が濃縮されていた。
 変異Dmd を標的とするSaCas9遺伝子編集によって、各BSDUごとにジストロフィンが復元された。一方、トリシクロDNAアンチセンスオリゴヌクレオチドによる修復実験において、転写レベルのDmd   修正がによるジストロフィンの復元が筋腱接合部から始まり、徐々に筋繊維全体へと広がっていくこと、また、ジストロフィー進行を抑制するには2%のレベルの復元で十分であることが、明らかになった。
 DMDの治療の成功には、筋線維のジストロフィンを広範囲に回復させることが重要であり、おそらく筋肉と腱の接合部が、最も重要であるという結論に至った。