[出典] "Development of HIV-Resistant CAR T Cells by CRISPR/ Cas-Mediated CAR Integration into the CCR5 Locus" Rothemejer FH [..] Tolstrup M. Viruses 2023-01-10. https://doi.org/10.3390/v15010202 [著者所属] Aarhus U.
 キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を用いた養子免疫療法は、B細胞悪性腫瘍の治療に大きな成功を収めており、HIV感染症の治療戦略としても大きな可能性を秘めている。最近の抗HIV広域中和抗体(bNAb)の使用における進歩は、CAR T細胞の最適な抗原ターゲティングのための重要な情報を提供している。しかし、CD4+ CAR T細胞はHIVに感染しやすいことから、その治療可能性は限定されていた。
 デンマークの研究チームが今回、CRISPR/Cas9システムを用いてCAR発現カセットをHIV感染の宿主因子をコードするCCR5  遺伝子座に組み込むことにより、CARの組み込みとCCR5の破壊を同時に達成し、HIV感染に耐性のある (抗HIV) HIV特異的CAR T細胞を作製した。
 この抗HIV CAR T細胞は、臨床的に強力なbNAb 10-1074の一本鎖可変フラグメント(scFv)を抗原ターゲティングドメインとして利用し、in vitro でHIV感染細胞を特異的に溶解することを確認した。また、抹消血単核細胞を用いたヒト化HIV感染モデルマウスでは、抗HIV CAR T細胞が増殖し、HIVの感染を一過性に抑制した。