[出典] "Inhibition of ribosome assembly factor PNO1 by CRISPR/Cas9 technique suppresses lung adenocarcinoma and Notch pathway: Clinical application" Roy SK [..] Srivastava RK. J Cell Mol Med 2023-01-10. https://doi.org/10.1111/jcmm.17657 [著者所属] Louisiana State University Health-New Orleans, Southeast Louisiana Veterans Health Care Systemなど.
 がん細胞の高いエネルギー需要は、リボソーム生合成の亢進やリボソームタンパク質の変異と関連しており、リボソームは抗がん剤の有力な標的である。一方で、RNA結合タンパク質"partner of NOB1" PNO1(Dim2, Rrp20ともと呼ばれる)は、リボソームの生合成に不可欠である。米国の研究チームは今回、PNO1が肺腺がんのバイオマーカーとして利用可能か、さらに、CRISPR/Cas9によるPNO1のノックダウンによってがん細胞の増殖および上皮間葉転換(EMT)を抑制可能か、検証した。
  • PNO1の発現は、正常肺組織に比べて肺腺がんで有意に高いことを確認した。
  • 肺腺がん患者における PNO1 の発現は、ステージ、結節転移、喫煙によって増加した。
  • 男性の肺腺がん組織は、女性の組織よりも高いPNO1を発現していた。
  • さらに、変異型Tp53を有する肺腺がん組織は、野生型Tp53を有する組織よりも高いPNO1を発現しており、Tp53の状態がPNO1発現に影響を及ぼしていることが示唆された。
  • PNO1 のノックダウンは、細胞生存、コロニー形成、EMT を阻害し、アポトーシスを誘導した。
  • Notch受容体を介したシグナルの制御異常が肺腺がんを促進することが知られているが、今回、PNO1ノックダウンにより、Notch受容体、そのリガンド、下流標的の発現が抑制され、Notchシグナルが阻害されることを同定した。
  • また、PNO1ノックダウンにより、CCND1、p21、PTGS-2、IL-1α、IL-8、CXCL-8遺伝子が抑制された。 
 以上のことから、PNO1が肺腺がん診断用バイオマーカーとして使用できること、また肺腺がん治療のためのターゲットとなり得ることを示唆するという結論に達した。