[注] ScrABBLE(Syntehtic crRNA Arrays Blend for Boosting and LEading)
[出典] "CRISPR–dCas12a-mediated genetic circuit cascades for multiplexed pathway optimization" Wu Y [..] Liu L. Nat Chem Biol. 2023-01-16. https://doi.org/10.1038/s41589-022-01230-0 [著者所属]  Jiangnan U,  Imperial College Londonグラフィカルアブストラクト 
 微生物細胞工場の生産効率の向上には、複数の標的を協調的に制御する効果的な方法が必要である。中国の研究機関を主とする研究チームは今回、枯草菌におけるグルコサミン-6-リン酸(GlcN6P)生合成を例にとり、CRISPR-dCas12a (dCpf1)をベースとする技術によって、代謝経路の多重最適化を効率的に行うための「設計-構築-評価-学習(design-build-test-learn: DBTL)」フレームワークを提案した。
 はじめに、GlcN6Pのバイオセンサーとして機能するシグナル増幅回路(biosebsor-signal-amplifying circuit: BSAC)と2つの遺伝子制御回路(genetic regulation circuits: GRCs)、フィードフォーワードGRCと位相依存性GRC、を搭載したプラットフォーム株を設計・構築 (design-build)した。このプラットフォーム株に、dCas12aとともにGRCを駆動する人工のCRISPR RNAアレイであるScrABBLEデバイスを組み込むことで5,184種類の変異株を生成し、GlcN6P産生能を評価 (test)した。最後の学習(learn)の段階で、ミカエリス・メンテンの式に基づく反応速度論モデルによる改良を施し、最も優れたGlcN6P産生能を示す変異株を選定した。また、ScrABBLEデバイスの性能も、3種類の蛍光タンパク質を利用して、評価した。
 この手法によって開発したGRCカスケードを帯びた変異株を介して、貴重な医薬品であるN-アセチルグルコサミンとN-アセチルマンノサミンの合成を実現し、N-アセチルグルコサミンの力価は、15リットルのバイオリアクターで183.9 g/Lに達した。