[出典] "An evolved AAV variant enables efficient genetic engineering of murine T cells" Nyberg WA, Ark J [..] Asokan A, Eyquem J. Cell 2023-01-19. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.12.022 [著者所属] UCSF, UCLA, Gladstone-UCSF Institute of Genomic Immunology, Parker Institute for Cancer Immunotherapy, Duke University School of Medicine, Duke U, Université de Paris Citéグラフィカルアブストラクト
 相同組み換え修復を利用した遺伝子をT細胞に正確に導入することは、養子細胞療法やT細胞生物学にとって画期的なことであった。こうした技術の評価には、免疫応答性(immunocompetent)のモデルマウスを使った実験が必要であるが、そうしたモデルマウスへのヒトへの適用に最適化されてきたアデノ随伴ウイルス(AAV)によるDNAテンプレートの導入効率が低いことが課題であった。
 米仏の研究チームは今回、マウスT細胞を標的とするDNAテンプレートの効率的ノックインを可能にするために、マウスT細胞に高いトロピズムと導入効率を示す人工的AAV、Ark313、を開発した。
  • ヒトへの利用に開発されたAAV6から、構造情報に基づいたタンパク質進化法を利用して、マウスT細胞で高い遺伝子導入効率を示すArk313を作出した。
  • ゲノムワイドなノックアウトスクリーニングにより、Ark313の感染に必須な宿主因子QA2とArk313の細胞侵入機構を同定した。
  • Ark313は、一過性の遺伝子導入や精密なゲノム操作に利用可能であり、Ark313による、ヌクレオフェクションを必要としないDNAデリバリー、CRISPR-Cas9を介したノックアウト、大きな導入遺伝子の標的への統合が実証された。
  • Ark313は、免疫応答性モデルマウスにおけるTrac標的CAR-T細胞およびトランスジェニックTCR-T細胞の前臨床モデリングを可能にした。
 マウスT細胞における効率的な遺伝子ターゲティングは、細胞治療の改善に大きな可能性を秘めており、実験的T細胞免疫学の道を開くものである。