[出典] "CRISPR mediated transactivation in the human disease vector Aedes aegypti " Bui M [..] Akbari OS. PLoS Pathog 2-23-01-19. https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1010842 [著者所属] UCSD, JHU, Caltech, UC Irvine
 ネッタイシマカは、黄熱病、チクングニア熱、ジカなどのウイルスの感染を媒介する主要なベクターである。病気の蔓延を防ぐためには、ネッタイシマカの個体数を制御し、減少させることが重要である。この戦略は主として、化学的殺虫剤に頼ってきたが、作用が非特異的であり、また、薬剤耐性を帯びた個体が発生し、さらに、コストも高く、異なる手法が求められている。そこで、遺伝子を利用した防除法の開発が注目されているが、これまでは遺伝子ノックアウトで個体数を減らしたり感染を防ぐことが目的とされてきた。また、ウイルスに対する抵抗力のメカニズムをコード化した外来DNAを挿入したり、外来DNAを集団内で継続的に遺伝させることに重点を置いた遺伝子ドライブが、試みられてきた。一方で、ネッタイシマカの内在遺伝子の発現を誘導するアプローチはとられてこなかった。
 中国の研究チームは今回、ネッタイシマカにCRISPRa (dCas9-VPR (VP64-p65-Rta))を最適化し、発生遺伝子である even-skipped (eve)、ヘッジホッグ (hh )を効果的に過剰発現させ、その形態学的表現型を得ることに成功した。また、免疫経路制御因子 AaRel1 というToll免疫経路の正の転写調節因子を過剰発現させたところ、ネッタイシマカにおけるデングウイルス血清型2(DENV2)の力価を著しく抑制することに成功した。
 このシステムは、内因性遺伝子のプログラムによる過剰発現など、これまでイエネコでは不可能であった研究経路を可能にする汎用性の高いツールであり、遺伝子特性研究および革新的なベクターコントロールツールの開発に役立つと思われる。