[出典] "CRISPR/Cas9-mediated induction of relapse-specific NT5C2 and PRPS1 mutations confers thiopurine resistance as a relapsed lymphoid leukemia model" Nguyen TTT [..] Inukai T. Mol Pharmacy 2023-01-20. https://doi.org/10.1124/molpharm.122.000546 [著者所属] 山梨大、国立医薬品食品衛生研究所、独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター.
チオプリン製剤の一種である6-メルカプトプリン(6-MP)は、小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の維持療法において重要な薬剤であったところで、小児ALLの次世代シークエンス解析により、チオプリン代謝に関わるNT5C2 遺伝子とPRPS1 遺伝子の再発特異的変異の出現が、最近、明らかになった。この場合、白血病細胞のマイナークローンは、化学療法(6-MP治療を含む)中にNT5C2 またはPRPS1 変異の結果として6-MP耐性表現型を獲得し、選択的拡大後に疾患を再発させる可能性があることが示唆された。この再発ALLにおける6-MP耐性を克服する新しい治療法を開発するにあたり、NT5C2 およびPRPS1 に変異を有するヒト白血病モデルが必要である。
日本の研究チームは今回、CRISPR/Cas9システムを用いた相同組換え(HR)により、2つの再発特異的ホットスポット変異(NT5C2 遺伝子のR39Q変異およびPRPS1 遺伝子のS103N変異)をヒトリンパ性白血病細胞株に誘発することを目指した。2つの変異のいずれかに特異的なsgRNAとドナーDNAテンプレートを組み合わせたCas9を導入した細胞を6-MPで選択した結果、意図したNT5C2 -R39QおよびPRPS1 -S103N変異を有するサブラインがHRの結果として得られた。さらに、6-MP耐性サブラインでは、非相同末端結合の結果、NT5C2 およびPRPS1 遺伝子の標的部位に多様なインフレームの小さな挿入/欠失が確認された。
これらのサブラインは、6-MP感受性に関わるNT5C2およびPRPS1遺伝子変異の分子薬理評価や、白血病細胞のチオプリン耐性を克服する治療法開発に有用である。
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