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[出典] "A highly specific CRISPR-Cas12j nuclease enables allele-specific genome editing" Wang Y [..] Wang Y, Lan F. Sci Adv 2023-02-10. https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abo6405 [著者所属] Fudan U, Sun Yat-sen U Cancer Center, Shanghai Institute of Nutrition and Health, Science and Technology Research Institute (Chongqing), Shanghai Jiaotong U School of Medicine, Shanghai Engineering Research Center of Industrial Microorganisms, National Center for Cardiovascular Diseases (Beijing)
 中国の研究チームが、J. A. Doudnaの研究チームが巨大なファージから発見したCasΦ(Cas12j)[*1] のファミリー6種類の機能的スクリーニングの結果、Cas12j-8を超コンパクトなサイズの理想的なゲノムエディター用ヌクレアーゼとして決定した。
  • Cas12j-8はAsCas12aやUn1Cas12f1と同程度の活性を示す。
  • Cas12j-8は、PAM近位領域の1塩基ミスマッチに感受性の高い特異的なヌクレアーゼである。
  • Cas12j-8が一塩基多型(SNP)を持つ遺伝子のアレル特異的破壊を可能にすることを実証した。
  • Cas12j-8は、単純なTTN PAMを認識し、ゲノム上の標的部位の密度が高い。
  • In silico 解析の結果、Cas12j-8は、ClinVarデータベースの25,931個の臨床関連変異とdbSNPデータベースの485,130,147個のSNPのアレル特異的破壊を可能にすることが同定され、Cas12j-8は優れた臨床応用の可能性を示唆した [注] なお、他の小型なCasヌクレアーゼであるUn1Cas12f1 [*2] は、ClinVarデータベースの10,443個とdbSNPデータベースの253,229,256個を標的可能。
  • Cas12jをベースとする938 aaとコンパクトなABE、Cas12j-8ABE8e、を作製し、HEk293細胞の20種類の内在遺伝子座のうち4遺伝子座で活性を示すことを確認した。一方で、Cas12jをベースとするCBE、Cas12j-8CBE-hA3A、は編集活性を示さなかった。
[背景]
 RNA誘導型(guided)CRISPR-Casシステムは、原核生物の適応免疫系であったが、今や広く哺乳類のゲノム編集に利用されている。原核生物における免疫記憶として機能するCRISPRアレイは、複数のリピートとスペーサーからなり、転写されて複数のRNA種[CRISPR RNA(crRNA)]へと成熟し、相補的塩基対形成により外来DNAを標的としてCasヌクレアーゼを誘導する。一部のCasヌクレアーゼは、さらにtrans-activating crRNA(tracrRNA)を必要とし、これがCas認識のためのステムループを形成する。
 DNAゲノムエディターとして現在3種類のCasヌクレアーゼが利用されている。Cas9(タイプII CRISPR)、Cas12(タイプV CRISPR)、Cascade-Cas3(タイプI CRISPR)である。Casのヌクレアーゼ活性に依存するゲノム編集に加え、触媒活性を失活させたdCas/nCasとエフェクタードメインの融合タンパク質により、塩基編集(BEs)、プライム編集(PE)、転写抑制/活性化(CRISPRi/a)、エピジェネティック修飾、ゲノム可視化など、様々な応用が広がってきた。
 CRISPR-Casシステムは、非相同末端接合(NHEJ)修復経路を介して変異アレルを破壊することにより、常染色体顕性遺伝性疾患の治療に応用可能なことがいくつかの研究で示されている [*3]。常染色体顕性遺伝病は、一塩基ミスセンス変異が主な原因である。ミスセンス変異が新規のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を形成している場合、CRISPR-CasヌクレアーゼはPAM特異的アプローチによって変異アレルを破壊することが可能である。あるいは、ミスセンス変異がガイド配列内に位置するガイド特異的アプローチによって変異アレルを破壊することも可能である。しかし、多くの一塩基変異は、Casヌクレアーゼの特異性が低いため、ガイド特異的アプローチでは野生型アレルと識別することができない。したがって、一塩基変異を識別できる特異性の高いCasヌクレアーゼを開発することが重要である。
 特異性に加えて、Casヌクレアーゼの大きさが、遺伝子治療への応用に対するもう一つのハードルとなる。遺伝子治療のための最も一般的な遺伝子導入方法であるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの最大容量は4.7kbであるが、SpCas9をはじめとする多くのCasエフェクター融合タンパク質は、このAAVのパッケージング能力を超えていた。その中で、最近、700〜800 aaの10種類のCas12j(CasΦ)ヌクレアーゼのファミリーが同定された [*1]。そのエフェクター自身のサイズ上の優位性に加えて、Cas12jはtracrRNAを必要としなことから、AAVで十分デリバリー可能であり、また、空きスペースを他の因子のデリバリーに活用可能である。
 CasΦを発見したPauschらは [*1] 、3つのCas12jヌクレアーゼ(Cas12j-1、Cas12j-2、Cas12j-3)を特徴付けたが、そのうち2つは哺乳類および植物細胞で最小限の活性しか示さなかった。今回、Pauschらが報告した6つのCas12jオルソログを検証し、Cas12j-8が効率的かつ特異性の高いゲノムエディターであることを確認した。
 
[Cas12j (CasΦ) 関連crisp_bio記事]
[*2] Cas13f1関連crisp_bio記事
[*3] 変異アレルを標的とする遺伝子治療関連crisp_bio記事
  • 2021-03-14 CRISPR/Cas9によるアレル特異的KOによる網膜色素変性症 (RP)療法. https://crisp-bio.blog.jp/archives/25819019.html;"Allele-Specific Knockout by CRISPR/Cas to Treat Autosomal Dominant Retinitis Pigmentosa Caused by the G56R Mutation in NR2E3" Diakatou M [..] Kalatzis V. Int J Mol Sci 2021-03-05. 
    https://doi.org/10.3390/ijms22052607
  • CRISPRメモ_2017/12/22 [第3項] .Cas9-sgRNA RNPをカチオン性脂質でベートーベン・マウスに直接送達することで、常染色体優性難聴の遺伝子治療が可能性なことを示した. ; "Treatment of autosomal dominant hearing loss by in vivo delivery of genome editing agents" Gao X, ~ Chen ZY, Liu DR. Nature. 2017 Dec 20. https://doi.org/10.1038/nature25164
  • CRISPRメモ_2017/11/29-2 [第8項] 常染色体優性遺伝疾患の個別化医療を実現するアレル特異的CRISPR遺伝子編集技術開発を目指して. ;"Towards personalised allele-specific CRISPR gene editing to treat autosomal dominant disorders" Christie KA, Courtney DG, DeDionisio LA, Shern CC, De Majumdar S, Mairs LC, Nesbit MA, Moore CBT. Sci Rep. 2017 Nov 23;7(1):16174.
  • https://doi.org/10.1038/s41598-017-16279-4

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