crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] 2023-02-26 10:24 先行論文を引用するなどテキストを大幅に改訂    
[出典] "CRISPR/Cas9-mediated targeted knock-in of large constructs using nocodazole and RNase HII" Eghbalsaied S, Kues WA. Sci Rep 2023-02-15. https://doi.org/10.1038/s41598-023-29789-1 [著者所属] Federal Research Institute for Animal Health (Neustadt), Islamic Azad University (Tehran), U Melbourne.
 相同組み換え修復(HDR)過程を利用して、サイズの大きなカセットをオンターゲット(標的部位)へ組み込むことが可能であり、実施例も多数ある。しかし、HDR を介した標的部位へのノックインには、効率がきわめて低いという問題があった。本研究では、CRISPR/Cas9システムとピューロマイシン・トランスジーンを大きなDNAドナー(5.3-7.1kb挿入カセット)の一部として含む大型プラスミド(12.1-13.4kb)をいくつか作成し、それらを用いてVenusトランスジーンを1コピー持つヘミ接合型マウス胚線維芽細胞(MEF)を作製し、その標的部位へのノックイン効率を評価した。また、HDRと非相同末端結合(NHEJ)を区別して検出する方法も確立した。
 こうした実験から、プラスミドの質を向上させることで、大きなサイズのプラスミドに伴う細胞毒性という障害を回避することが可能なことが明らかになった。また、TILD (targeted integration with linearized dsDNA) カセットの使用は、環状プラスミドと比較してHDR率を向上させないことも明らかになった。
 しかし、ノコダゾールをエレクトロポレーション溶液に直接を封入することにより、HDR率が大幅に改善され、また、RNase HIIとドナー・プラスミドを細胞へ同時にエレクトロポレーションすることで、HDR事象が大幅に改善されることを、見出した。
 本研究の結果、エレクトロポレーション液に細胞周期を同調させる試薬を用いることで、哺乳類ゲノムのHDRを効率よく誘導できることが明らかとなった。

[著者らの関連先行論文]
エレクトロポレーションによるマウス胚性線維芽細胞およびヒトiPS細胞へのトランスフェクション効率を向上させるプロトコルを開発
[出典] A versatile bulk electrotransfection protocol for murine embryonic fibroblasts and iPS cells” Eghbalsaied S, Hyder I, Kues WA. Sci Rep 2020-08-07. https://doi.org/10.1038/s41598-020-70258-w [著者所属] Friedrich-Loeffler-Institut,  Islamic Azad U
 遺伝子導入法としてエレクトロポレーション法が広く利用されているが、外来DNAの初代細胞へのエレクトロポレーションの効率は極めて低い。著者らは今回、レポーター遺伝子およびgRNA/Cas9をコードするプラスミドを用いたマウス胚性線維芽細胞(MEF)およびヒトiPS細胞への高効率トランスフェクションのために、OptiMEM-GlutaMAXを用いた方形波パルスプロトコルを開発した。
  • レポーターをコードしたプラスミドを用いた場合、MEFおよびiPS細胞ともに95%以上のトランスフェクション効率が達成された。
  • このプロトコルは、6.2~13.5kbのプラスミドサイズで効率的であった。
  • gRNA/Cas9プラスミドのトランスフェクションにより、エラーを起こしやすいNHEJ修復過程を誘導し、Venusレポーターを1コピー持つトランスジェニック細胞において、98%までの高率な標的遺伝子ノックアウトが達成された。
  • 2種類のgRNAをコードするプラスミドを共エレクトロポレーションすることにより、Venusトランスジーンの標的欠失を効率よく(最大67%の欠失率)実現した。
 このプロトコルは、マウス初代細胞のCRISPRを行う上で、簡便で、費用対効果が高く、効率的であり、CRISPR/Cas9プラスミドシステムを用いた遺伝子工学のツールとして有望である。

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット