[注] KO (ノックアウト);腎ファブリー病(Fabry disease (FD) nephropathy: FDN)
[出典] "CRISPR/Cas9-mediated A4GALT  suppression rescues Fabry disease phenotypes in a kidney organoid model" Cui S, Shin YJ [..] Chung BH. Transl Res 2023-02-18. https://doi.org/10.1016/j.trsl.2023.02.005 [著者所属] Catholic U Korea.
 韓国の研究チームはまずFDN患者由来ヒトiPSC (CMC-Fb-002) と、野生型 (WT) ヒトiPSCからガラクトシダーゼ遺伝子(GLA 遺伝子)をノックアウトしたFD特異的ヒトIPSC(GLA-KO )を作製した。次に、CMC-Fb-002とGLA-KOの両方でA4GALT をKOし、それぞれFb-002- A4GALT-KO とGLA /A4GALT-KO を作製した。
 これらのhiPSCを用いて腎臓オルガノイドを作製し、電子顕微鏡下でα-ガラクトシダーゼ-A酵素(α-GalA)活性、グロボトリオシルセラミド(Gb-3)沈着、zebra bodyの形成などを比較した。また、RNA-seqとqPCRを用いてmRNAの発現量を比較した。生成されたhiPSCは、染色体破壊を伴わない典型的な多能性マーカーを示した。CMC-Fb-002 と GLA-KO における GLA の発現レベル、および Fb-002-A4GALT-KO と GLA/A4GALT-KO における A4GALT の発現レベルは、それぞれ WT-hiPSC と比較して減少した。
 これらのhiPSCを用いて作製した腎臓オルガノイドは、典型的なネフロン・マーカーを発現した。CMC-Fb-002とGLA-KOのオルガノイドでは、WTのオルガノイドと比較して、α-GalA活性が著しく低下し、Gb-3の沈着が増加した。また、リゾソーム内の封入体も検出された。しかし、これらの疾患表現型は、GLA/A4GALT-KOおよびFb-002-A4GALT-KO腎臓オルガノイドの両方でA4GALTをKOすることにより、救済された。RNA-seqでは、両方のGLA変異体オルガノイドでFDNの進行に関連する遺伝子の発現レベルがWTのそれと比較して増加することが示された。このような増加は、GLA/A4GALT-KOまたはFb-002-A4GALT-KOオルガノイドでは救済された。
 CRISPR/Cas9によるA4GALTの抑制は、FDN表現型を救済することから、FDNの治療アプローチとして提案することができる。