2023-07-27 Scientific Reports 誌刊行論文の書誌情報を挿入追記
2023-03-14 bioRxiv 投稿に準拠した初稿
[注] MMEJ: Microhomology-mediated end joining/マイクロホモロジー媒介末端接合法
2023-03-14 bioRxiv 投稿に準拠した初稿
[注] MMEJ: Microhomology-mediated end joining/マイクロホモロジー媒介末端接合法
[出典] "Long-read sequence analysis of MMEJ-mediated CRISPR genome editing reveals complex on-target vector insertions that may escape standard PCR-based quality control" Higashitani Y (東谷優輝), Horie K (堀江 恭二). (bioRxiv. 2023-03-04). Sci Rep. 2023-07-19. https://doi.org/10.1038/s41598-023-38397-y [著者所属] 奈良県立医科大
本論文は、培養細胞でCre/loxPシステムの条件付きアレルを生成する過程で確認した、標的ゲノム領域における意図しない複雑なベクター挿入パターンを報告している。条件付きアレルを生成するためには、loxP配列が標的ゲノム領域の両側に挿入される必要がある。さらに、培養細胞で表現型解析を行うには、両アレルを改変する必要がある。したがって、ゲノムの合計4カ所を改変する必要がある。
CRISPRシステムによるゲノムへの外来配列導入には、DNA二本鎖切断 (DSB)からの修復経路とし、相同組換え(HR)、非相同末端接合(NHEJ)、マイクロホモロジー媒介末端接合(MMEJ)という異なる修復経路を選択可能である。
- HRは遺伝子ターゲッティングに最も広く使われている経路で、ターゲティングベクターには500-1,000bpの相同性アームが必要とされ、また、主に細胞周期のS期後半からG2期にかけて活性化することが報告されている。
- NHEJ経路は細胞周期に左右されずに活性化するが、そのためHRの場合と比較して、組み換え部位の接合配列の制御が困難であるが、神経細胞などHR法が非効率な細胞種において、標的挿入が可能となる。
- MMEJ経路を利用するPITCh(Precise Integration into Target Chromosome)システムと呼ばれる方法の場合は、10-40塩基という短いマイクロホモロジーアームを組換えに利用する。HR経路に対して、MMEJ経路は主にM期からS期初期にかけて活性化することが報告されており、HRとは異なる組換え様式を期待できる。
今回、34塩基のloxP配列のゲノムへの挿入にあたり、ターゲティングベクターの相同性アームの長さが短いことから、目的とするアレル編集結果をPCRで容易に評価できると想定し、PITCh法を採用した。しかし、予想に反して、PCRスクリーニングにおいて、予想以上に長い意図しないサイズのバンドが高い頻度で検出された。これらのバンドをNanoporeロングリードシーケンスで解析したところ、MMEJだけでなく、HRやNHEJが関与する複雑なベクター挿入が明らかになった [Figure 4参照]。
挿入されたベクター配列のサイズは、ゲノム編集クローンの標準的なPCRベースの品質管理法の検出限界を超えている可能性がある。本研究で検出された意図しないオンターゲット組換えは、ゲノム編集の品質管理段階において慎重に除外する必要があることを提案する。
[MMEJ利用ゲノム編集関連crisp_bio記事]
- 2019-10-31 MMEJ配列随伴ヒト遺伝子欠損変異を同定し、CRISPR-Cas9編集MMEJ修復を介して疾患モデル細胞を作出. https://crisp-bio.blog.jp/archives/20574290.html
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