crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2024-02-06 フェイク論文に関するcrisp_bio記事へのリンクを以下に追記
[20240205更新] フェイク論文による研究社会の汚染を阻止するために行動する時が来た. : ペーパーミルやHindawiにも言及している。

2023-10-08 マレーシア、ベトナム、中国のハゲタカジャーナル対策

[出典] "3 major publishers on the blacklist" Huynh T. Tuoi Tre Newspaper 2023-09-27. [Google翻訳] https://tuoitre-vn.translate.goog/3-nha-xuat-ban-lon-vao-danh-sach-den-20230927113809178.htm?_x_tr_sl=auto&_x_tr_tl=en&_x_tr_hl=en&_x_tr_pto=wapp
 The Ministry of Universities Malaysiaと中国のZhejiang University of Industry and Trade (浙江工贸职业技术学院)は、国の予算を使用した研究の成果をMDPI, HindawiおよびFrontiersが出版するジャーナルへの投稿を禁止した。また、ベトナムのVingroup Innovation Fundも、HindawiとMDPIのジャーナル掲載論文は研究成果として認めないとした。中国科学院は2021年の"warning list"に35ジャーナルをあげたが、その中には、MDPIの7ジャーナル、Hindawiの5ジャーナル、Frontiersの3ジャーナルが含まれていた。

2023-03-24  Clarivate が運営しているWeb of Science (WoS) は、2023年初めから、AIを利用して評価対象とした500以上のジャーナルの中から、これまでに、50種類以上のジャーナルをWoSの対象外にすることを決定した [*1]。MDPIのジャーナルの中では、IJERPH (International Journal of Environmental Research and Public Health:IF 4.614)JRFM (Journal of Risk and Financial Management : IF 1.903)が、2023年のJournal Citation Reports の対象外になり、IFが付与されなくなることが明らかになった [*2]
 [出典]
  1. "Supporting integrity of the scholarly record: Our commitment to curation and selectivity in the Web of Science - More than 50 journals already de-listed this year for failing to meet our quality selection criteria" Quaderi N (Editor-in-Chief & Vice President, WoS) Clarivate 2023-03-20. https://clarivate.com/blog/supporting-integrity-of-the-scholarly-record-our-commitment-to-curation-and-selectivity-in-the-web-of-science/
  2. "Clarivate Discontinues IJERPH and JRFM Coverage in Web of Science" MDPI 2023-03-22. https://www.mdpi.com/about/announcements/5536
2023-03-13 Predatory Reports. 2023-02-23に基づく初稿

[出典] "List of all MDPI predatory journalsPredatory Reports. 2023-02-23
 ハゲタカジャーナル(predatory journal)は、著者からの掲載料収入を目的とし、十分な査読を行わず、質が保証されない論文・レビューを大量に刊行することで、この10年来問題になっていた。"Predatory publishers/Predatory publishing"という用語と概念はコロラド大学デンバー校のジェフリー・ビールが提唱したと言われ、ビールは、2012年から2017年まで、そのリストを公表していた[*1]。2017年以後は、匿名のグループなどが"ハゲタカジャーナル"の認定を続け、また、Cabell's International が、"ハゲタカジャーナル"の詳細な認定基準を発表し、Predetaroy Reports (有料)を発表している。
 MDPIは、Molecular Diversity Preservation Internationalという組織からスピンオフしたオープンアクセスの学術雑誌の出版社であり、2010年5月にShu-Kun LinとDietrich Rordorfによって正式に登録され、スイスのバーゼルに本社が置かれた。現在は、スイスを含め、11カ国に編集オフィスを持ち、中国に5オフィス、ルーマニアとセルビアの両方に2オフィス、英国、カナダ、スペイン、ポーランド、日本、タイ、シンガポールにオフィスを構えている。2023年2月現在、MDPIは413誌のジャーナルと9誌のカンファレンスジャーナルを発行している。
 2023-03-13 15.54.25匿名グループのPredatory Reportsは今回、MDPIのジャーナル422誌全てを"ハゲタカジャーナル"リストに含めることに決定した [Webサイトのスクリーンショット引用右図参照]
 Predatory Reportsのこの決定以来、MDPIがツイッターのトレンド・タームに上がってきた。今回のPredatory Reportsの選択は当然、から、422誌全てを"ハゲタカジャーナル"と認定するのは行き過ぎ、や、Predatory Reportsは一体何者、まで、さまざまなツイートが流れている。
 本ブログでも、MDPIが出版しているジャーナル掲載のCRISPR関連の論文やレビューを、絞り込みながら、取り上げたきた(もっとも、ここではそもそもbioRxiv などの査読を経ていない投稿も取り上げてきたのだが)。なお、MDPIの出版にはレビューが占める割合がかなり高いが、これに対しても、アクセス数ひいてはインパクトファクターを稼ぐ戦略である、という批判もある。
 なお、MDPIは、中国の研究者の発表の場を設けることが目的であったとする解説もあるが、2019年に中国科学院がMDPIの7ジャーナルを「注意を要するジャーナル」のリストに含めた [*3]。


 [*] 引用資料
  1. "What I learned from predatory publishers" Beall J. Biochem Med (Zagreb) 2017-06-15. https://doi.org/10.11613/BM.2017.029
  2. "MDPIはハゲタカジャーナルなのか?その評判" 日本の科学と技術 2019-008-04. http://scienceandtechnology.jp/archives/31893 
  3. Guest Post - Guest Post – An Early Look at the Impact of the Chinese Academy of Sciences Journals Warning List. Petrou C. The Scholary Kitchen 2021-04-14. 
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コメント

 コメント一覧 (2)

    • 2. 1950年代のNatureの論文は酷い内容で毎週1ページで粗悪な内容でした。
    • 2024年01月30日 15:49
    • 1950年代のNatureの論文は酷い内容で毎週1ページで粗悪な内容でした。 毎週1報の論文出して数を稼いでいた人もいた、;今でも学術誌として批判がある。高価であるし、論文の初期選定はポストドクレベルが拾い上げる。新聞の巨大広告レベルと言えるl
      どうしても商業誌ですからね。あとで間違いの論文も多いと聞く。私の経験では審査員も多くは素人です。著者の方がよく知っている場合も多い。
      ガリレオやガロアの論文は誰が審査した?
    • 3. crisp_bio crisp_bio
    • 2024年01月31日 19:15
    • >>2
      STAP細胞の論文(2報) が刊行されたのはNature誌でした。奇しくも10年前の2014年1月のことでした。また、この1月には、ダナファーバー癌研究所が画像の齟齬などの指摘を受けて、ビッグジャーナルから発表していた6本の論文の撤回と31本の論文の修正を発表しました。1950年代と違うのは、編集者や査読者以外の第三者が不適切な論文を発見し、その情報を比較的短期間のうちに世界中で共有できるようになったことでしょうか。
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