[注] ICP (Ion Concentration Polarization/イオン濃度分極) [*]
[出典] "dCas9-Mediated PCR-Free Detection of Oncogenic Mutation by Nonequilibrium Nanoelectrokinetic Selective Preconcentration" Lee S [..] Yang J, See SW, Kim SJ. Anal Chem 2023-03-09. https://doi.org/10.1021/acs.analchem.2c05539 [著者所属] Seoul National U, Jeju National Uグラフィカルアブストラクト
 本研究の最先端ナノ界面動電法 (nanoelectrokinetic )は、微量のがん原性DNAの変異を、エラーの多い (erroneous) PCRを介さずに、短時間で検出可能とするブレークスルーとなる。韓国の研究チームは、CRISPR/dCas9の配列特異的な標識認識とイオン濃度分極(ICP)を利用して、標的DNA分子を個別に予備濃縮し、迅速に検出する。すなわち、dCas9が変異体に特異的に結合することで生じる移動度シフトを利用して、マイクロチップ内で変異DNAと正常DNAを識別する。
 この技術に基づき、発がん指標であるEGFR DNAの一塩基置換(single base substitution: SBS)を1分間で検出することが可能である。さらに、標的変異体の濃度が0.1%であっても、ICPの明確な前濃縮機構により、市販の妊娠検査キットのように、標的DNAの有無(陽性は2ライン、陰性は1ライン)を一目で識別可能である。

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参考レビュー
  • "Nanoelectrokinetic Selective Preconcentration Based on Ion Concentration Polarization" Choi J [..] Lee H, Kim SJ. BioChip J 2020-03-13. https://doi.org/10.1007/s13206-020-4109-3 [著者所属] Seoul National U, Jeju National U, :イオン濃度分極(Ion Concentration Polarization: ICP)と呼ばれるナノスケールの界面動電 (electrokinetic) 現象は、その高い効率性と容易なサンプルハンドリングにより、バイオ・化学分析プラットフォームに新しい時代を切り開いた。本総説では、ICPを用いた選択的な前濃縮プロセスの最新の進歩について紹介する。