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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Transposon-encoded nucleases use guide RNAs to selfishly bias their inheritance" Meers C [..] Sterberg SH. bioRxiv 2023-03-14 [preprint] https://doi.org/10.1101/2023.03.14.532601 [著者所属] Columbia U, U Pennsylvania
 挿入配列(IS)は、細菌に見られるコンパクトで広汎な転移因子であるが、そこにコードされているのは、自身の動員や維持に必要な遺伝子のみである。IS200/IS605は、TnpAトランスポザーゼによって触媒される“Peel and Paste”  [Microbiol Spectr 2015]転置を行うが、興味深いことに、CRISPR関連エフェクターのCas12とCas9に、それぞれ、進化的に関連する多様なTnpB-とIscB-ファミリータンパク質もコードしていることが明らかにされた。最近の研究で、このTnpBファミリー酵素がRNAにガイドされるDNAエンドヌクレアーゼとして機能することが示されたが、この活性のより広い生物学的役割は謎のままであった。
 著者らは今回、TnpB/IscBが、TnpAトランスポザーゼの作用の結果としてトランスポゾンが永久に失われるのを防ぐために必須であることを明らかにした。
  • 多様なTnpB/IscBオーソログをコードするGeobacillus stearothermophilus の関連ISエレメントのファミリーを選択し、単一のTnpAトランスポザーゼがトランスポゾン切除の活性を帯びていることを示した。
  • TnpBとTnpAを同時に発現させると、TnpAを単独で発現させた場合と比較して、トランスポゾンの保持率が著しく向上することを発見した。
  • TnpAとTnpB/IscBは、トランスポゾンの切断とRNAガイド下でのDNA切断において、それぞれ同じATリッチなトランスポゾン隣接モチーフ(transposon-adjacent motif: TAM)を認識しており、トランスポザーゼとヌクレアーゼのDNA配列特異性に進化上の収束が見られることが明らかになった。
 本研究により、RNAガイド下DNA切断は、トランスポゾンの利己的な継承と拡散を促進するために生じた原始的な生化学的活性であり、その後、抗ウイルス防御のためのCRISPR-Cas適応免疫の進化の過程でウイルスに対する防御のために取り込まれたことが示唆された。
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