[注] 脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA);ヌシネルセン(SMA治療薬;商品名スピンザラ)
2023-09-28 Science 論文をハイライトした記事の情報を以下に追記
2023-04-01 Science 論文に準拠した初稿
[出典] "Base editing rescue of spinal muscular atrophy in cells and in mice" Arbab M, Matuszek Z [..] Liu DR. Science 2023-03-30. https://doi.org/10.1126/science.adg6518 [著者所属] Boston Children's Hospital, Harvard Medical School, Broad Institute, Harvard U, Ohio State U

[出典] Research Highlight "Base editing: a promising tool to rescue spinal muscular atrophy" Bhatia P, Sterneckert J. Signal Transduct Target Ther 2023-09-25. https://doi.org/10.1038/s41392-023-01583-5 [著者所属] Technische Universität Dresden
David R. Liuの研究チームが、アデノシン塩基編集 (ABE) による、脊髄性筋萎縮症の単回投与かつ永続的治療法の可能性を示した。研究チームは、SMAの病因であるSMNタンパク質のレベルを増加させる最も効果的な方法を特定するために、5つの異なる方法について広範な試験を行い [Fig. 1引用右図参照]、最適な戦略に辿り着いた。
2023-04-01 Science 論文に準拠した初稿
[出典] "Base editing rescue of spinal muscular atrophy in cells and in mice" Arbab M, Matuszek Z [..] Liu DR. Science 2023-03-30. https://doi.org/10.1126/science.adg6518 [著者所属] Boston Children's Hospital, Harvard Medical School, Broad Institute, Harvard U, Ohio State U
SMAは乳児に死をもたらす主たる遺伝病であり、Survival Motor Neuron 1(SMN1)遺伝子の欠損またはホモ型変異によりSMNタンパク質が不足することが原因である。承認されているSMA治療薬は、生涯反復投与を必要とするか、効果が減弱する可能性あるが反復投与が困難である。また、ヒト内在の遺伝子制御下で正常なSMNタンパク質レベルを回復するに至らず、運動神経細胞における病原性のSMNの不足や他の組織に慢性毒性を引き起こす可能性がある。
David R. Liuの研究チームは今回、SMN1 のパラログ遺伝子でありC6>Tの変異を帯び、完全長のSMN1に対して短縮され短寿命のSMNタンパク質を発現するSMN2 遺伝子を編集することで、恒久的に、SMNタンパク質のレベルを回復し、SMNフェノタイプを修復可能なことを示した。
- SMN2 遺伝子の制御領域5ヶ所を標的とするCas9ヌクレアーゼまたは塩基エディターによるSMN2 遺伝子の転写後または翻訳後の介入を経て、SMNタンパク質の発現を亢進する79種類の戦略を試みた。
- BE-HiveとinDelphilと実験を併用して、一見明らかでなかった戦略を含む精密な戦略を選択可能になった。
- Cas9 ヌクレアーゼによる修復効果は見られたが、DNA二本鎖切断(DSB)がもたらすリスクが課題となり、また、DSB経路を介さない塩基エディターよるSMN2 T6>Cの変異修復がより安全であり効率も高かった。
- ABEをベースとする最適な戦略(D10)によって、SMA培養細胞では、C-to-T変異の修復効率99%とSMNタンパク質の発現を40倍向上させた。
- Smnタンパク質を欠損しヒトSMN2 遺伝子を帯びたモデルマウスに、AAV9を介したD10 ABE送達を試み、脊椎運動細胞の43%への送達に成功し、ABEを取り込んだ細胞において、T6>C変換(SMN2 のSMN1への変換)効率87% を達成し、従来の治療薬では達成できなかったレベルの運動機能回復と、長期の延命を実現した。
- ABEとヌシネルセンを単回同時投与することで、ABEの効果が強化され、平均寿命が、未処置で17日、D10 ABEで22日から111日まで延びた。これはヌシネルセンの短期間効果とD10 ABEの遅効であるが長期継続する効果が相乗した結果と思われる。
[関連crisp_bio記事]
- 2023-02-12 塩基編集による脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療. https://crisp-bio.blog.jp/archives/31502130.html
- "Base editing as a genetic treatment for spinal muscular atrophy" Alves CRR [..] Kleinstiver BP. bioRxiv 2023-01-21 [プレプリント] https://doi.org/10.1101/2023.01.20.524978;David R LiuらのScience 誌への投稿は2023年1月11日
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