2017/08/17「3.バクテリアの獲得免疫機構におけるセカンドメッセンジャー発見」関連記事3件へのリンクを追加

1.Cas9は、DNA結合から、gRNADNAの相補性をチェックするコンフォメーションを経てDNA切断に至る

[出典] Dagdas YS, Chen JS, Sternberg HS, Doudna JA, Ahmet A. “A conformational checkpoint between DNA binding and cleavage by CRISPR-Cas9.” Sci Adv 2017 Aug 04;3(8): eaao0027.

[背景] Cas9は、DNA配列上のPAM配列(5-NGG-3/SpCas9)と20塩基長のgRNAと相補的な配列とを認識・結合し、そのHNHRuvCの2つのヌクレアーゼドメインによってそれぞれ二本鎖DNAの標的鎖(target strand, TS)と非標的鎖(nonratget strand, NTS)を切断する。著者らはFRETを利用した先行研究で、SpCas9HNHTS上の開裂リン酸基を加水分解するコンフォメーションへと(不活性状態から活性状態へと)変化することを明らかにしていた(Fig 1-A: HNH interconversion)。今回は、Fig 1-A/Bの設計による単分子FRETsmFRET)解析を利用して、DNA結合・切断時のCas9-sgRNA複合体におけるHNHドメインのコンフォメーション変化を詳らかにし(Fig 1-B: Low FRETからHighFRETへ)、オンターゲット・オフターゲット編集のより精密な制御への手がかりを提示した。

 Dagdas 1  Dagdas 2]

 [成果]

l   Cas9-sgRNA複合体には3種類のコンフォメーションが存在(Fig 2

²  (R) - RNA結合dsDNA非結合状態;(D) - ターゲットdsDNA結合状態;(I) - RNADNAの相補性(オンターゲットか否か)をチェックするRDの中間的状態

²  DNA非存在下では〜50%(R)状態、残る~50%が短時間(I)状態;オンターゲット結合時は90%(D)状態を維持、3%(D)(I)の間で激しく遷移;1-3 bpミスマッチDNA結合時は、35%(I)(D)の間を遷移(オンターゲット結合時の〜100分の1の速度);1-4 bpミスマッチDNA結合時は、(R)(I)の間を遷移し、(D)への遷移は非検出

l   HNHMg2+によって(D)状態に安定化し(Fig. 3)、DNA切断後も触媒部位にとどまり、NTS遊離と共に(I)へと不安定化する(Fig. 4)。

l   gRNAの短縮がHNHドメインをより小さなミスマッチに対して(I)状態に留め(Fig. 4)オフターゲット作用を減弱するが、オンターゲット編集効率低下を伴う。DNAへの変異導入とsmFRET解析を組み合わせて、オンターゲット編集の最適化とオフターゲットの最小化をもたらすCas9-sgRNAを設計することが望まれる。 

2.CRISPR-Cpf1が多様なPAMを認識する構造基盤

 [出典] Yamano T, Zetsche B, Ishitani R, Zhang F, Nishimasu H, Nureki S. “Structural Basis for the Canonical and Non-canonical PAM Recognition by CRISPR-Cpf1.”

Mol Cell. Available online 3 August 2017.

l   先行研究にて、Lachnospiraceae bacterium ND2006 (LbCpf1)Acidaminococcus sp. BV3L6 (AsCpf1) TTTV (V:A/G/C)の標準PAMに加えて、CTTA, TCTATTCAのようなCを含む非標準PAMも認識し低効率ではあるがin vivoゲノム編集することが報告されていた。

l   今回、LbCpf1AsCpf1in vitroin vivoで標準PAMと非標準PAMの双方を認識することを確認し、LbCpf1crRNAおよびPAM(標準と非標準の4種類:TTTATCTATCCACCCA)を帯びた標的DNAの三者複合体の構造を2.4-から2.5Å分解能で解き、PAM配列に応じた相互作用に伴うLbCpf1のコンフォメーション変化、ひいては、非標準PAMを認識するLbCpf1の柔軟性の構造基盤を明らかにした。

l   さらに、LbCpf1AsCpf1およびCas9との比較から、DNA切断機構のCpf1における共通性と、Cpf1Cas9の間の差異を明らかにした。

3.バクテリアの獲得免疫機構におけるセカンドメッセンジャー発見

[出典] [NewS & VIEWS] Johnson K, Bailey S. “Microbiology: The case of the mysterious messenger.” Nature. 2017 August 2.

[出典] Niewoehner O, Garcia-Doval C, Rostøl JT, Berk C, Schwede F, Bigler L, Hall J, Marraffini LA, Jinek M. “Type III CRISPR–Cas systems produce cyclic oligoadenylate second messengers. Nature. 2017 Jul 19.

[出典] Kazlauskiene M, Kostiuk G, Venclovas Č, Tamulaitis G, Šikšnys

 V. “A cyclic oligonucleotide signaling pathway in type III CRISPR-Cas system.Science. 2017 Jun 29. pii: eaao0100.

l   Martin Jinekの研究チームとVirginijus Šikšnysの研究チームがそれぞれ異なる観点からのアプローチで共に、タイプⅢ CRISPR-CasシステムにおけるウイルスDNAからの転写物RNA切断に、サイクリックオリゴアデニル酸が、セカンドメッセンジャーとして機能することを発見した。

l   タイプⅢ CRISPR-Casシステムでは侵入ウイルスDNAに対して、Cas10Csm2/3/4/5の複合体による非選択的DNA切断、DNAから転写されたウイルスRNACRISPR RNAガイドを介した選択的切断、加えて、複合体とは独立なCsm6によるウイルスRNAの非選択的切断という多段階の免疫応答が報告されていた。また、複合体には、DNAヌクレーアゼドメイン、RNAヌクレアーゼドメイン、そしてPalmドメインが存在し、Csm6には機能未知のCARFドメインが存在することも報告されていた。

l   Jinekチームは、構造解析から見出したCARFドメインのヌクレオチド結合ポケットの存在とCARFドメインにtetraadenylateが結合するという情報から出発し、Thermus thermophilusにて、PalmドメインがATPからサイクリックオリゴアデニル酸を生成し、これがCsm6CARFドメインに結合しCsm6をウイルスRNAの非選択的切断へと誘導する分子機構を明らかにした。

l   Šikšnysチームは、PalmドメインがATP二分子を結合可能なことからStreptococcus thermophilusにて、タイプⅢCRISPR-CasシステムのATP依存性の解析を始め、Palmドメインからサイクリックオリゴアデニル酸が生成され、Csm6CARFドメインに結合することを発見した。

l   今後、サイクリックオリゴアデニル酸のCARFドメインを帯びたCsm6以外のタンパク質に対する作用や細胞間のシグナル伝達への関与、細胞内での動態やホストのRNAに対する作用など、研究に広がりを期待。

[タイプIII CRISPR-Cas Csm6関連記事]

4.タイプⅡ-A CRISPR-CasシステムがNHEJ修復過程を阻害する

[出典] Bernheim A, Villamanan AC, Basier C, Rocha EPC, Touchon M, Bikard D.

“Inhibition of NHEJ repair by type II-A CRISPR-Cas systems.” bioRxiv. Posted August 1, 2017.

l   バクテリアの5,563完全ゲノムを解析し、NHEJとタイプⅡCRISPR-Casシステムの共存が一例に過ぎないことを見出した。

l   Bacillus subtilis由来NHEJパスウエイとStreptococcus thermophilus/Streptococcus pyogenes由来タイプⅡCRISPR-Casによる実験系で、NHEJはⅡCRISPR-Casシステムの機能に影響を与えないが、後者のCsn2タンパク質がNHEJパスウエイを阻害することを見出した。 

5.MilliporeSigma、欧州におけるCRISPR特許係争に名乗り

[出典]  Cohen J. "CRISPR patent battle in Europe takes a ‘wild’ twist with surprising player.Science Aug. 4, 2017 , 4:16 PM

l   EPO(欧州特許庁)は2017年7月27日に、Merck KGaAの子会社MilliporeSigma(米国とカナダ、欧州ではSigma-Aldrich)に、真核生物細胞のノックインへのCRISPR利用に関する特許を承認することを示唆した。

l   MilloporeSigmaは、「Broadの2013年Sicence論文刊行の6日前に」特許申請とされている。

l   欧州では、MilliporeSigmaの他にUC、Broad, ToolGen, Vilnius大学(Šikšnys

V在籍)、及びHarvard Collegeが特許申請している。