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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2024-04-28 査読済み論文の書誌情報を追記
2023-04-18 bioRxiv 投稿に準拠した初稿
[出典] "Optimization of Cas12a for multiplexed genome-scale transcriptional activation" Griffith AL, Zheng F, McGee AV [..] Doench JG. (bioRxiv 2023-04-13) Cell Genomics 2023-09-01. https://doi.org/1016/j.xgen.2023.100387 [著者所属] Broad Institute of MIT and Harvard

 Cas12aシステムは、Cas9と異なり、単一の転写物から多重なガイドRNAsを生成することが可能であり、ゲノムに対して多重な摂動を同時に加えるツールとして活用されている。Cas12aによる多重ノックアウトスクリーン (CRISPRko) については研究と応用が進んできた [*1]
CRISPRkoまたはCRISPiによるスクリーン結果とCRISPRaによるスクリーン結果を比較すると、CRISPRaはCRISPRko/iスクリーンの単なるミラーイメージになる結果だけでなく、新たな遺伝子を引き出し細胞回路の全体像を明らかにすることに貢献してきた。しかし、Cas12aをベースとするCRISPRaには、最適化の余地が残されていた。

 先行研究 [*2] において、不活性化したCas12aであるdCas12aに直接、種々のトランス活性化因子(transactivation domain; TAD) そしてまたはそれらを多重に結合した場合、結合形式によってその転写活性化のレベルが変動することが報告されていた。しかし、レンチウイルスで送達した場合に、細胞集団の大部分の細胞において標的遺伝子を活性化するような"highly penetrant activity"は、実現されていなかった。

 John Doenchが率いる研究チームは今回、enAsCas12aに直接VP64を結合させた上で、ALFAタグとナノボディーの系を利用して、トランス活性化ドメイン のp65 をsgRNA-Cas12aに繋留する手法を開発し、4種類までの遺伝子を同時に活性化し、大規模なスクリーニングを実行可能なことを示した。

 Cas12aをベースとするCRISPRaシステムを利用して、細胞増殖とMEK阻害剤の制御因子を同定するためのゲノムワイドスクリーンを行い、その結果を、ORFの過剰発現で得られた結果、およびCas9をベースとするCRISPRaで得られた結果と比較した。
 また、最も高性能なガイドRNAを利用することで、多重化アレイの活性をかなり予測することが可能なことを示し、そうした活性なガイドRNAを選択する基準も明らかにした。

[*] 関連crisp_bio記事
  1. 2023-01-07 がん細胞に対するパラログペアの作用をゲノムスケールでスクリーン可能とするCRISPR/Cas12a多重ノックアウトプラットフォーム"IN4MER". https://crisp-bio.blog.jp/archives/31250863.html
  2. 2019-08-13 SiT-Cas12a: 単一mRNA (Single-Transcript)にコードしたCas12aとCRISPRアレイよる多重ゲノム工学. https://crisp-bio.blog.jp/archives/19357067.html
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