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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] CAST (CRISPR-associated transposase)
[出典] "Novel molecular requirements for CRISPR RNA-guided transposition" Walker MWG, Klompe SE, Zhang DJ, Sernberg SH. Nucleic Acids Res 2023-04-20. https://doi.org/10.1093/nar/gkad270 [著者所属] Columbia U
 CASTは、触媒活性を失ったCRISPR-CasシステムがRNAに誘導されて結合する標的サイトの下流へのDNA挿入を実行する。この転位が、いくつかの鍵となるタンパク質間相互作用とタンパク質-DNA間の相互作用に依存することが報告されているが、トランスポゾンDNAの効率的な統合活性を支配する配列の特徴についてはほとんど報告が無い。
 コロンビア大学の研究チームは今回、プール型sgRNAライブラリーを利用したスクリーニングとハイスループットシーケンシングにより、タイプI-F Vibrio cholerae CAST (VchCAST) において、DNA転位を制御する配列決定因子を同定した。
  • ドナーDNA上で、大規模なトランスポゾン末端のライブラリーから、TnsBトランスポザーゼ結合部位ヌクレオチドへのプレファランスに加えて、DNA統合の宿主因子 (integration host factor; IHF)のコンセンサス結合部位をコードする保存領域を発見した。VchCASTが効率よく転移を進行させるにIHFが必要であり、CASTに関与する新たな宿主因子 (本記事タイトル中のキャストはこれを意味したが、原論文ではこの表現は使われていない) の存在が明らかになった。
  • ターゲットDNAからは、これまで報告されてきた不均一性を1 bpの分解能で説明可能にする統合部位に好ましい配列モチーフを発見した。 
  • さらに、トランスポゾンの変異体を作出して、タンパク質をインフレームで標識可能にした。
 この結果、TnsBとトランスポゾンDNAの間に形成されるペアエンド複合体のアッセンブリーとアーキテクチャーに関する新たな手がかり、ひいては、CASTシステムをベースとするゲノム工学に向けたカスタムペイドーロ配列の設計に有用な情報が、得られた。
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