[出典] "Exosome-Based Multivalent Vaccine: Achieving Potent Immunization, Broadened Reactivity, and Strong T-Cell Responses with Nanograms of Proteins" Cacciottolo M, Nice JB [..] Sun M. Microbiol Spectr. 2023-04-24. https://doi.org/10.1128/spectrum.00503-23 [著者所属] Capricor Therapeutics 
 これまでに認可された新型コロナウイルスワクチン (以下、ワクチン) は全てスパイクタンパク質 (以下、スパイク)を標的としている。最初のワクチンは、スパイクをコードするmRNAを脂質ナノ粒子 (LNP) でデリバリーする戦略で、極めて短期間で実現されたが、極低温での保存・輸送が必要であり、また、スパイクの変異に対する免疫に限界があった。
 mRNAワクチンに続いて実現されたタンパク質ワクチンは、mRNAワクチンよりも広域な免疫応答を誘導したが、開発に長期間を要し、また、免疫応答を強化するためにアジュバントが必要であった。
 これらに対して、Capricor Therapeutics社は、新型コロナウイルスの2種類のタンパク質をワクチンをエクソソームでデリバリーする戦略、StealthX™、を採用した。
  • エクソソームの表面に、SARS-CoV-2のデルタ変異株のスパイク、またはスパイクよりも保存性が高いヌクレオカプシドタンパク質を発現させる (それぞれ、Stealth X-Spike [STX-S]とStealth X-Nucleocapsid [STX-N]) と命名)。
  • STX-SまたはSTX-Nを単独で投与しても、組み合わせて投与 (STX-S+N) しても、STX-SとSTX-Nの双方が、液性免疫応答と細胞性免疫応答からなる強力な免疫を誘導した。この免疫応答は、注目すべきことに、アジュバントを加えることなくナノグラムという微量なタンパク質量で誘導された。
  • マウスとウサギでの前臨床試験において、ナノグラムのSTX-S+Nワクチンによって、抗体量が増加し、スパイクの他の変異体にも交差反応を示す強力な中和抗体と、強力なT細胞応答が誘導された。
  • また、免疫応答の競合が発生することなく、スパイクとNタンパク質の双方をデリバリーすることで、SARS-CoV-2免疫をより強力に誘導可能なことが明らかになった。
 異なるタンパク質を標的とする多価ワクチンをエクソソームでデリバリーする戦略は、開発速度が早く、製造が容易で、微量で中和抗体とT細胞応答の双方を強力に誘導することから、今後のウイルスワクチン開発法として有望である。

[注] StealthX (STX) エクソソームは、Capricor社の実験室規模の精製技術を利用して、293F細胞の培養上液から精製される。