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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

注] AMR (AntiMicrobial Resistance / 薬剤耐性)
[出典] "Removal of AMR plasmids using a mobile, broad host-range CRISPR-Cas9 delivery tool" Walker-Sünderhauf D [..] van House S. Microbiology (Reading). 2023-05:25. https://doi.org/10.1099/mic.0.001334 [著者所属] U Exeter, IU Exeter Medical School, Technische U Dresden.
 薬剤耐性遺伝子の拡散を抑制する戦略の一つが、その運び手のプラスミドの取り込みと移動を阻止するこことである。その手法としてこれまではもっぱら、AMR遺伝子をコードするプラスミドを宿主微生物からCRISPR/Casゲノム編集技術を利用して除去することが試みられてきた。その際に、CRISPR/Casシステムをファージまたはプラスミドで送達され、送達対象となる宿主の範囲が限られていた。したがって、この手法を、複雑な微生物群集の複数のメンバーからのAMRプラスミド除去へと展開するためには、広い宿主域へと効率的に送達可能とする担体が必要である。
 英独の研究チームは今回、AMR遺伝子を標的とするようにプログラムしたcas9をコードする、宿主域の広いIncP1プラスミドpKJK5 *[Fig. 1 参照]を作製した。removal of AMR得られたプラスミドpKJK5::csgは、大腸菌から常在プラスミドを除去し、かつ、AMRプラスミドの取り込みを阻害することを実証した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。
 さらに、pKJK5::csgの広宿主域性を活かして、さまざまな環境、豚、ヒト関連の大腸菌群、および2種のPseudomonasの分離株でAMRプラスミドの取り込みを阻害することに成功した。
 本研究により、pKJK5::csgは、AMRプラスミド除去のための有望な広宿主域CRISPR-Cas9送達ツールとして、複雑な微生物群集において、幅広い細菌種からAMR遺伝子を除去するために応用できる可能性があることが明らかになった。

 [*] ncP1プラスミドpKJK5参考文献]
  • ”The multiple antibiotic resistance IncP-1 plasmid pKJK5 isolated from a soil environment is phylogenetically divergent from members of the previously established alpha, beta and delta sub-groups” Bahl MI, Hansen LH, Goesmann A, Sørensen SJ. Plasmid. 2007 Jul;58(1):31-43. https://doi.org/10.1016/j.plasmid.2006.11.007
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