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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] "The Brain and Long Covid" Eric Topol. GROUND TRUTHS. 2023-05-28. https://erictopol.substack.com/p/the-brain-and-long-covid
 UKバイオバンクからの2022年Nature 論文 [*1]では、COVIDに感染した約400人において、脳の萎縮、灰白質の減少、認知機能の低下が見られることが、ベースライン (感染前の状態)と感染後 (約3年後)のMRI画像を対照群 (COVID非感染者)と比較した結果、明らかにされた。この論文以来、SARS-CoV-2が脳に及ぼす影響について大きな関心が寄せされていた中で、ミュンヘンを主とする研究チーム [*2] と、ハンブルグを中心とする研究チーム [*3] による2つの新しい研究論文が、COVIDの軽症患者でも持続的に起こる脳組織の炎症の機構を明らかにした。
 今回のドイツからの報告は新型コロナウイルス感染に関連づけられる脳の炎症は、軽症や中等症といった症状の如何にかかわらず発生する可能性があることが示された。また、新型コロナウイルス後遺症として、brain fog、記憶喪失、認知不全、睡眠障害などの神経症状が報告されているが、中枢神経系における問題が、無症状で進行することが多々あることも示された。
 今回の報告は、UKバイオバンクと一見整合しないとことろもあるが、これは、感染から分析までの期間の長さの違い (UKバイオバンクの方が長期間) が主な原因と思われる。ポストポリオ症候群 (post-polio syndrome: PPS) は、ポリオウイルス感染から15-30年後に、筋萎縮などの症状が現れ、加えて、このところ、ウイルス感染による神経変性の報告も続いている [*4]。新型コロナウイルスについても、感染時無症状あるいは後遺症が発症しない場合でも、相当長期間にわたる観察が必要なことが示唆される。
 COVID感染にみられる脳神経系の炎症は、ミュンヘン・チームの報告からはスパイクタンパク質の持続的存在が契機となっていることが示唆されるが、SARS-CoV-2が脳神経細胞に直接感染するのは稀とされており、直接感染を介さない炎症誘導機構が提案されている [*5]

[*] 引用文献
  1. "SARS-CoV-2 is associated with changes in brain structure in UK Biobank" Douaud G, Lee S, Alfaro-Almagro Fet al. Nature 2022-04-28. https://doi.org/10.1038/s41586-022-04569-5:crisp_bio 新型コロナウイルス感染は脳の構造と機能にも影響する - UKバイオバングの脳画像比較解析から
  2. "SARS-CoV-2 Spike Protein Accumulation in the Skull-Meninges- Brain Axis: Potential Implications for Long-Term Neurological Complications in post-COVID-19" Long Z, Mai H, Kapoor S [..] Ertürk A. bioRxiv 2023-04-05 [preprint]  https://doi.org/10.1101/2023.04.04.535604:COVID感染から長期間経過しCOVIDが死因ではない20名の死者を対象とする分析;20名のうち12名の頭蓋骨-髄膜の境界部分と脳組織に、対照群には見られないSARS-CoV-2スパイクタンパク質の蓄積が見られた。スパイクタンパク質以外のウイルス成分は脳実質には見られなかった;マウスモデルにスパイクタンパク質を注入すると、脳細胞の損傷と細胞死および持続的な炎症が誘導された;これらの現象は、ヒトでもマウスモデルでも他の骨髄系には見られなかった。
  3. "Brain imaging and neuropsychological assessment of individuals recovered from a mild to moderate SARS-CoV-2 infection" Petersen M, Nägele FL, Mayer E et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2023- 05-30/05-23. https://doi.org/10.1073/pnas.2217232120:ワクチンを接種していたなかった軽症 (mild) から中等症 (moderate) のCOVID患者223名とCOVIDに感染していない223名のMRIを比較した;UKバイオバンクではほとんどが中等症であったが、この研究では、中等症患者は半分以下 (44%) であった;MRI検査は、COVID感染から10ヶ月後に実施された;COVID患者だけに、脳白質に神経細胞炎症を示す2種類のMRIマーカー (細胞外水分量と3 方向の拡散平均の拡散量)が見られた。一方で、脳の萎縮は見られず、神経精神医学的スコアと認知機能は正常であった。
  4. 2023-05-29 11.59.07"Virus exposure and neurodegenerative disease risk across national biobanks" Levine KS, Leonard HL [.. ] Nalls MA. Neuron. 2023-01-19. https://doi.org/10.1016/j.neuron.2022.12.029
  5. "Viral pathogens increase risk of neurodegenerative disease" Blackhurst BM, Funk KE. Nat Rev Neurol 2023-03-02. https://doi.org/10.1038/s41582-023-00790-6
  6. [参考] REVIEW "The neurobiology of long COVID" Monje M, Iwasaki A. Neuron 2022-11-02/1-07. https://doi.org/10.1016/j.neuron.2022.10.006:FIgure 1引用右図参照
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