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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Protein structure prediction with in-cell photo-crosslinking mass spectrometry and deep learning" Stahl K, Graziadei A, Dau T, Brock O, Rappsilber J. Nat Biotechnol. 2023-03-20. https://doi.org/10.1038/s41587-023-01704-z [著者所属] Technische Universität Berlin, Science of Intelligence (Research Cluster of Excellence), Si-M/‘Der Simulierte Mensch’ (Berlin), University of Edinburgh.
 AlphaFold2は一次配列からの正確なタンパク質構造を予測を可能にしたが、コンフォメーションが変動するタンパク質や、相同配列がほとんど知られていないタンパク質の予測には課題を残こしている。AlphaLink
 ドイツと英国の研究チームが今回、光クロスリンキング質量分析 (以下、架橋MS) から得られる実験データである距離拘束情報をAlphaFold2アークテクチャに直接統合した構造予測手法であるAlphaLinkを開発し、この課題を解決した [AlphaLinkにおける情報のフローについてFig. 1引用右図参照]。
 AlphaLinkは、深層学習を介して、共進化関係と架橋MSデータを距離空間で融合させ、実験から得られるノイズの多い実験コンタクト・データを活かして、実験によってもシミュレーションによっても、推定・予測が困難な標的タンパク質の構造予測性を改善した。
 AlphaLinkの検証実験において、非正規アミノ酸であるフォトロイシン (photo-L) を用いた大規模な架橋MSを行い、大腸菌膜画分における615件のin situ 残基-残基コンタクトを特定し、AlphaFold2の予測性能が向上することを証明した。
 また、疎な架橋MSデータでも、予測を特定のコンフォメーション状態に紐づけることが可能なことを示し、実験と深層学習のハイブリッドアプローチによるタンパク質構造のダイナミクスの探求の可能性を切り開いた。
 さらに、距離拘束を残基間距離 (distgram) としてコード化することで、AlphaLinkを任意の距離拘束に拡張可能なことも示した。
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