[出典] 
1. Opinions "Is euchromatin really open in the cell?" Maeshima K, Iida S, Shimazoe MA, Tamura S, Ide S. Trends Cell Biol. 2023-06-27. https://doi.org/10.1016/j.tcb.2023.05.007 [著者所属] 国立遺伝学研究所、総合研究大学院大学;本文 8頁/参考文献 90件

 ゲノムDNAはコアとなるヒストン8量体に巻きつき、ヌクレオソームを形成する。高等真核細胞では、ヌクレオソームが不規則に折り重なり、クロマチンドメインとして機能する。生物学の教科書では、クロマチンはその圧縮の程度によって、ユークロマチンとヘテロクロマチンの2種類に分類され、ヘテロクロマチンは閉じて凝縮している一方で、ユークロマチンは塊状にならなお開いた状態 (open) にある、とされている。

 しかし、ユークロマチンは細胞内で本当に開いているのだろうか?ゲノミクスと先端イメージング研究による新たな証拠によって、ユークロマチンは凝縮した液体のようなドメインから構成されていることが明らかになった [本記事次項の論文とプレスリリース参照]。

 凝縮したユークロマチンは、高等真核細胞におけるデフォルトのクロマチン状態であるようだ。本解説では、細胞内のユークロマチンに関するこの新しい見解と、明らかになった構造がゲノムの機能にどのように関係しているかについて議論する。

2. 論文
"Condensed but liquid-like domain organization of active chromatin regions in living human cells" Nozaki T, Shinkai S, Ide S, Higashi K [..] Maeshima K. Sci Adv 2023-04-05.
https://doi.org/10.1126/sciadv.adf1488
プレス発表「ユークロマチンも凝縮した「塊」をつくっていた!」前島研究室・ゲノムダイナミクス研究室; 黒川研究室・ゲノム進化研究室. 国立遺伝学研究所 2023-04-04. https://www.nig.ac.jp/nig/images/research_highlights/PR20230406.pdf

 真核生物では、高次のクロマチン組織はドメインとして時空間的に制御され、様々な細胞機能を実現している。しかし、生きた細胞におけるその物理的性質(例えば、凝縮ドメインか伸長したファイバーループか、液体状か固体状か)は不明なままである。

 遺伝研の研究チームが、euchromatin 4ユークロマチンとヌクレオソームの蛍光標識と単一ヌクレオソームを観察可能な超解像蛍光顕微鏡、次世代DNAシーケンシング、計算機モデリングを組み合わせ、生きたヒト細胞における隣接する2つのヌクレオソームの運動相関解析を実現し [論文 Fig. 4引用右図参照]、DNA複製初期のユークロマチンの物理的組織と挙動を捉えることに成功した 。
  • ヌクレオソームは、euchromatin 8活性なクロマチン領域においても、直径〜150nmの物理的に凝縮したドメインを形成している。
  • 隣接する2つのヌクレオソーム間の平均二乗変位解析から、ヌクレオソームは〜150nm/〜0.5秒の時空間スケールで凝縮したユークロマチン・ドメイン内で液体のように振る舞い、クロマチンへのアクセスが容易であることが示された。
  • 時空間スケールが、μmと分を超えると、ユークロマチンは静止し固体のように見え、ゲノムの完全性の維持に寄与していることが示唆された。
  • [論文Fig. 8 引用左図モデル参照]
 
 本研究において、ユークロマチンについて、固定化した組織の解析では得られない知見を得られた。