- 真核・微生物と動植物にも原核生物のCRISPR-Casのようなシステムが存在する
[注] Fanzor:バクテリア由来TnpB_IS605のホモログで、真核生物の可動遺伝要素として発見された [*1]
2023-09-10 Fanzor関連bioRxiv 投稿1件とFanzor自体の存在を報告していた書誌情報を以下に追加
2023-08-23 Virginijus Šikšnysらによるハイライト記事へのリンクを追記:"Fanzors: Mysterious TnpB-Like Bacterial Transposon-Related RNA-Guided DNA Nucleases of Eukaryotes" Karvelis T, Siksnys V. CRISPR J. 2023-08-14.https://doi.org/10.1089/crispr.2023.29164.tka [著者所属] Vilnius U.
Feng Zhangが率いる研究チームが、真核生物で発見されたFanzorsタンパク質が、RNAガイド下DNAエンドヌクレアーゼとして機能することを明らかにした。好奇心を原動力とする研究 (Curiosity-driven research) の勝利である!
[注] Virginijus Šikšnys:2007年以来、CRISPR-Casシステムの研究に集中し、2021年4月18日にCas9によるDNA切断の論文をCell Reports 誌に投稿したが、レビューされることなくリジェクトされ、5月にPNAS に再投稿したが、レビューに数ヶ月費やされているうちに、あのJennifer DodnaとEmmanuelle CharpentierらのScience 論文が刊行されたというエピソードが語られている。
2023-07-03 初稿
[注] Fanzor:バクテリア由来TnpB_IS605のホモログで、真核生物の可動遺伝要素として発見された [*1]
2023-09-10 Fanzor関連bioRxiv 投稿1件とFanzor自体の存在を報告していた書誌情報を以下に追加
- "Eukaryotic RNA-guided endonucleases evolved from a unique clade of bacterial enzymes" Yoon PH, Skopintsev P, Shi H [..] Doudna JA. bioRxiv 2023-08-10 (preprint). https://doi.org/10.1101/2023.08.09.552727;原核生物のTnpBsと真核生物のFanzor1とFanzor2の進化系統関係を解析し、共通祖先のトランスポザーゼを推定
- "Homologues of bacterial TnpB_IS605 are widespread in diverse eukaryotic transposable elements" Bao W, Jurka J. Mob DNA 2013-04-01. https://doi.org/10.1186/1759-8753-4-12;TnpB-like proteins (Fanzor1とFanzor2)が、多様な真核生物の転位因子 (transposable elements: TEs) と真核生物に感染するサイズの大きなdsDNAウイルスに存在する。
Feng Zhangが率いる研究チームが、真核生物で発見されたFanzorsタンパク質が、RNAガイド下DNAエンドヌクレアーゼとして機能することを明らかにした。好奇心を原動力とする研究 (Curiosity-driven research) の勝利である!
[注] Virginijus Šikšnys:2007年以来、CRISPR-Casシステムの研究に集中し、2021年4月18日にCas9によるDNA切断の論文をCell Reports 誌に投稿したが、レビューされることなくリジェクトされ、5月にPNAS に再投稿したが、レビューに数ヶ月費やされているうちに、あのJennifer DodnaとEmmanuelle CharpentierらのScience 論文が刊行されたというエピソードが語られている。
2023-07-03 初稿
[出典] "Fanzor is a eukaryotic programmable RNA-guided endonuclease" Saito M, Xu P [..] Zhang F. Nature 2023-06-28. https://doi.org/10.1038/s41586-023-06356-2 [著者所属] Broad Institute of MIT and Harvard, McGovern Institute for Brain Research at MIT, MIT, HHMI.
ガイドRNAと標的核酸配列の間の相補性を介してRNAに誘導されるシステムは、原核生物においても真核生物においてもその生物学的過程において中心的な役割を果たしている。例えば、原核生物においては、CRISPR-Casシステムが外来遺伝要素に抗するバクテリアやアーケアの適応免疫を担っており、このシステムではCas9やCas12といったCasエフェクターは、ガイドRNAに誘導されてDNAを切断する。真核生物においては、RNAiやrRNA修飾を担うRNA誘導型システムがいくつか知られていたところ、Fang ZhangらがNCBIのEugene Kooninらと共に最近、RNA誘導型エンドヌクレアーゼとして、RNAにガイドされてヒトゲノムを切断するタンパク質IscBが原核微生物に加えて藻類にも存在することを発見し、IsrBおよびTnpBと共に、OMEGA (obligate mobile element–guided activity) システムとして報告し [*2]、その後、OMEGAエフェクターの構造が明らかにされた [*3, *4]。
OMEGAエフェクターのTnpB [*5] は、Cas12の祖先と推定され、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ活性を帯びている。このTnpBは、Fang Zhangらがその一例を示したように、真核生物においてトランスポゾンにコードされているFanzor [*1] (Fz) の祖先とも考えられることから、真核生物にもCRISPR-Cas/OMEGA様のプログラム可能なRNA誘導型エンドヌクレアーゼが広く存在する可能性がある。事実、McGovern Institute for Brain Research at MITのAbudayyehとGootenbergの研究チームが、"Programmable RNA-guided endonucleases are widespread in eukaryotes and their viruses"と題したbioRxiv投稿にて、Fanzorを含むHERMES (Horizontally-transferred Eukaryotic RNA-guided Mobile Element Systems) を6月14日に発表した[研究内容が拡充された版がScience Advances 誌から査読付き論文として2023-09-27に刊行された] [*6]。
Feng Zhangらは今回、AlphaFoldタンパク質構造データベースとNCBIのNR配列データベースを利用して抽出した3,003件の候補タンパク質 (原核生物からの80種類と真核生物から649種類を含む) の系統樹を描いた。真核生物に由来するタンパク質は、2013年のBaoらの論文で報告されていたFador1 (以下、Fz1)とFador2 (以下、Fz2) に大別された。
- Fz1とFz2のRNAプルダウンの実験から、これら2つのタンパク質がFz遺伝子座内のノンコーディングRNA (ωRNA) に結合することを同定した。
- 次に、Fz1とFz2がωRNAに誘導されて、TAM (target adjacent motif) 依存でDNAを切断すること、Fzのオーソログが、菌類、藻類、アメーバおよび貝に見られることを、同定した。
- さらに、Fzをヒトゲノム編集に利用可能なこと、土壌菌類ツボカビ Spizellomyces punctatus 由来Fz1 (SpuFz)については、ωRNAとタンパク質のコンポーネントを最適化することで、活性を10倍以上挙げることが可能なことを (indel生成率最大 18.4%)、示した。
- SpuFzについては、その2.7Å分解能構造をクライオ電顕法で再構成し [*]、真核生物 Fz (OMEGA)、原核生物 TnpB (OMEGA) および原核生物 Cas12 (CRISPR-Cas) の間で、共通な領域が存在していることを見出した一方で、ωRNAとFzの活性ドメインの相互作用は多様なことから、TnpBから原核生物のCas12と真核生物のFzへとそれぞれ進化してきたこと、および、ωRNAが触媒活性に関与していることが示唆されるとした。[*] [構造情報] PDB 8GKH/EMDB-40184: SpuFz1-ωRNA-target DNA
本研究において、RNA誘導型エンドヌクレアーゼがバクテリア、アーケア、および真核生物の3つの生物ドメイン全てに存在することが明確にされた。
[関連crisp_bio記事]
[引用論文/crisp_bio記事 [*]と参考crisp_bio記事]
- [*1] “Homologues of bacterial TnpB_IS605 are widespread in diverse eukaryotic transposable elements” Bao W, Jurka J. Mobile DNA 2013-04-01. https://doi.org/10.1186/1759-8753-4-12
- [*2] [20211010更新] トランスポゾンにコードされているIscBタンパク質は,RNAにガイドされてヒトゲノムを切断し,藻類にも存在する;"The widespread IS200/605 transposon family encodes diverse programmable RNA-guided endonucleases" Altae-Tran H, Kannan S [..] Zhang F. Science2021-09-09. https://doi.org/10.1126/science.abj6856; OMEGA (obligate mobile element–guided activity) systems, are found in all domains of life Ignatius tetrasporus
- [*3] 2022-11-12 CRISPR-Cas9の祖先とされるIscB-ωRNAリボ核タンパク質複合体の構造.
- [*4] 2022-10-15 OMEGAニッカーゼの一種であるIsrBとωRNAおよび標的DNAとの複合体構造.
- [*5] 2023-06-14 トランスポゾンにコードされているTnpBは、自身のmRNAをωRNAへとプロセスしそれをガイドとして利用する.
- [*6] crisp_bio 2023-07-03 真核生物とウイルスにも, 原核生物のCRISPR-Cas様エンドヌクレアーゼが存在する. “Programmable RNA-guided endonucleases are widespread in eukaryotes and their viruses" Jiang K, Lim J [..] Abudayyeh OO, Gootenberg JS. bioRxiv 2023-06-14 [preprint] ; HERMES (Horizontally-transferred Eukaryotic RNA-guided Mobile Element Systems)
- https://doi.org/10.1101/2023.06.13.544871 [著者所属] McGovern Institute for Brain Research at MIT, MIT, NCBI
- 2022-10-02 トランスポゾンとCRISPR: 自然界でゲノム編集システムに起こった編集 - OMEGA (IS200/IS605トランスポゾン)からCAST (Tn7-likeトランスポゾン)へ -
- 2023-04-19 トランスポゾン関連タンパク質TnpB*の構造から、Cas12ヌクレアーゼファミリーの機能性コアを特定.
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