2023-09-29 Science Advances 誌から査読済み論文として刊行
[出典] "Programmable RNA-guided DNA endonucleases are widespread in eukaryotes and their viruses" Jiang K, Lim J [..] Gootenberg JS, Abudayyeh OO. Sci Adv. 2023-09-27. https://doi.org/10.1126/sciadv.adk0171 [著者所属] McGovern Institute for Brain Research/MIT, MIT, NCBI/NIH, 東大/東京医科歯科大 (bioRxiv 投稿の共著者には見られなかった加藤一希博士が構造解析支援と構造図作成で貢献)
Sceince Advances 誌論文では、bioRxiv 投稿で使われていたHorizontally-transferred Eukaryotic RNA-guided Mobile Element Systems (HERMES) と言う表記は、Science Advances 論文では消えて、Fanzorタンパク質に統一されており、本ブログ記事でも、それに応じてテキストを改訂し、ヒト細胞編集部分を加筆し、図をSceince Advances 誌論文からの引用に切り替えた。
[出典] "Programmable RNA-guided DNA endonucleases are widespread in eukaryotes and their viruses" Jiang K, Lim J [..] Gootenberg JS, Abudayyeh OO. Sci Adv. 2023-09-27. https://doi.org/10.1126/sciadv.adk0171 [著者所属] McGovern Institute for Brain Research/MIT, MIT, NCBI/NIH, 東大/東京医科歯科大 (bioRxiv 投稿の共著者には見られなかった加藤一希博士が構造解析支援と構造図作成で貢献)
Sceince Advances 誌論文では、bioRxiv 投稿で使われていたHorizontally-transferred Eukaryotic RNA-guided Mobile Element Systems (HERMES) と言う表記は、Science Advances 論文では消えて、Fanzorタンパク質に統一されており、本ブログ記事でも、それに応じてテキストを改訂し、ヒト細胞編集部分を加筆し、図をSceince Advances 誌論文からの引用に切り替えた。
2023-07-03 初稿
[出典] "Programmable RNA-guided endonucleases are widespread in eukaryotes and their viruses" Jiang K, Lim J [..] Abudayyeh OO, Gootenberg JS. bioRxiv 2023-06-14 [preprint] [著者所属] McGovern Institute for Brain Research at MIT, MIT, NCBI[背景]
真核生物と原核生物のゲノムには、可動遺伝要素 (mobile genetic elements: MGE) の一種である多様なトランスポゾンが大量にコードされている。原核生物にみられる極めて豊富なIS200/605ファミリーのトランスポゾンには、TnpAとTnpBの遺伝子がコードされており、TnpAは、一本鎖の'peel and paste'転位を担うトランスポザーゼであるが、TnpBのトランスポゾンにおけるは未だ明確にされていない。
TnpBはRuvC-様ヌクレアーゼドメイン (RNase H fold) を含み、このドメインは、タイプV CRISPRエフェクターCas12 (特に、Cas12a) のヌクレアーゼドメインと関連しており、TnpBからCas12へと直接に進化したと見られている。事実、RuVC-様ドメインの進化系統解析から、タイプVサブタイプ群にわたって分類されている一連のCas12はそれぞれTnpBsの異なるグループに由来することが示されている。
TnpBsは、IscB、IsrB および IshBヌクレアーゼとあわせて、OMEGA (Obligate Mobile Element–Guided Activity) システムのエフェクターに位置付けられている [*1]。OMEGAシステムの遺伝子座には、ガイドとして機能するωRNAが、ヌクレアーゼ遺伝子に隣接してコードされており、また、コーディング領域がしばしば重なっている。このωRNAとTnpBの複合体が、プログラム可能なRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼとして機能することが、生化学実験と細胞実験によって、実証されている。
RuvCドメインを帯びたタンパク質は原核生物に限らない。TnpBホモログであるFanzorsが真核生物にも存在していることが報告されている [*2] 。バクテリアとアーケアに見られるTnpBsの多様性を反映して、Fanzorsは、後生動物、菌類、藻類、アモルフェアおよび大型のdsDNAウイルスのいくつかに見られる。Fanzorsは主として真核生物で見られるFanzor 1と、dsDNAウイルスに見られるIS607様トランスポゾンに見られ、また、dsDNAウイルスゲノムに見られるFanzor 2とに大別されている。
[成果]
AbudayyehとGootenbergの研究チームは今回、真核生物とウイルスの
ゲノムからTnpBホモログを検索・解析した結果、多数のRNA誘導型エンドヌクレアーゼを発見し、その進化の過程を進化系統解析により再構築した。Horizontally-transferred Eukaryotic RNA-guided Mobile Element Systems (HERMES) と命名して投稿した [Fig. 1引用右図参照]。

真核生物への適応と拡散の過程で、FanzorHERMESタンパク質は核局在シグナルを獲得し、遺伝子はイントロンを獲得し、真核細胞で機能するための広範で長期にわたる適応が進んできたことが示唆された。
FanzorHERMESヌクレアーゼはCRISPR-Casにも見られるRuvC ドメインの触媒部位を再配置したもので [Figure 4引用右図参照]、TnpBの別個のサブセットに似ており、Cas12aのようなトランス切断活性 (コラテラル活性)を持たない。
研究チームは、Fanzorヌクレアーゼが、
ヒト細胞において検出可能な切断活性およびインデル生成活性を有する効率的なゲノム編集に応用できることも実証した [Fig. 5引用左図参照]。Fanzorヌクレアーゼはコンパクト (~600 aa)であるため送達が容易であり、真核生物由来であることから、ヒトにおけるこれらのヌクレアーゼの免疫原性を緩和することも期待できる。しかし、Cas12fのような他の小型RNAガイドヌクレアーゼで達成されているように、ヒト細胞における活性をさらに改善する必要はある。
[*] 引用crisp_bio記事/論文

Fanzorヌクレアーゼが多様な真核生物の系統や関連ウイルスに広く分布していることから、真核生物にはさらに多くの現在未知のRNAガイドシステムが存在する可能性があり、将来の特性解析や新しいバイオテクノロジーの開発のための豊富な資源となることが示唆される。
[*] 引用crisp_bio記事/論文
- [20211010更新] トランスポゾンにコードされているIscBタンパク質は,RNAにガイドされてヒトゲノムを切断し,藻類にも存在する;"The widespread IS200/605 transposon family encodes diverse programmable RNA-guided endonucleases" Altae-Tran H, Kannan S [..] Zhang F. Science 2021-09-09. https://doi.org/10.1126/science.abj6856; OMEGA (obligate mobile element–guided activity) systems.
- Homologues of bacterial TnpB_IS605 are widespread in diverse eukaryotic transposable elements” Bao W, Jurka J. Mobile DNA 2013-04-01. https://doi.org/10.1186/1759-8753-4-12
[Fanzor関連crisp_bio記事]
- 2023-09-14 [ハイライト] 真核生物のRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼの発見はFan(zor)tasticである!
- [20230910更新] 真核生物からヒトゲノム編集可能なRNA誘導型エンドヌクレアーゼを再発見
- 2023-08-17 真核生物のRNAガイド・エンドヌクレアーゼは、シアノバクテリア酵素のユニークなクレイドから進化した
- 2023-07-05 コンパクトでヒト細胞において活性を示す新たなTnpBを原核生物ゲノム配列から同定
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