[出典]
- 論文 "Evolutionary mining and functional characterization of TnpB nucleases identify efficient miniature genome editors" Xiang G, Li Y, Sun J, Huo Y [..] Zhang YE, Wang H. Nat Biotechnol. 2023-06-29. https://doi.org/10.1038/s41587-023-01857-x [著者所属] Institute of Zoology (Beijing), Institute for Stem Cell and Regeneration (Beijing), Beijing Institute for Stem Cell and Regenerative Medicine, U Chinese Academy of Sciences, CAS Center for Excellence in Animal Evolution and Genetics
- Behind the Paper "Efficient TnpB genome editors identified by a large-scale screening" Xiang G (Institute of Zoology). Biotechnology & Bioengineering Community. 2023-06-29. https://bioengineeringcommunity.nature.com/posts/efficient-tnpb-genome-editors-identified-by-a-large-scale-screening
CRISPR-Casシステムの進化系統解析に基づいたクラス、タイプ、およびサブタイプからなる分類体系は継続的に更新され、新たなサブタイプが同定され遺伝子編集ツールボックスが拡充されてきている。その中で、SaCas9 (1053 aa)、Nme2Cas9(1082 aa)、CjCas9 (984 aa) といったSpCas9よりもかなり小型なCas9オーソログが同定さてきたが、それでもまだ1,000 aa近いサイズであり、Casエフェクターに機能ドメインを融合する塩基エディター (BEs) やプライムエディター (PE) は、遺伝子治療で広く利用されているAAVベクターでデリバリー可能な容量の限界を超えてしまう。最近、Cas9オーソログの2分の1程度のサイズ (410-550 aa) のCas12fシステムも同定されたが、その編集効率は最適化を経ても平均して10%に届かない。
CRISPR-Casシステムの分類体系の構築・更新をリードしてきたNCBIのEugene V. Kooning [*1]らは、CRISPR-Casの起源を探る中で2015年に、原核生物のトランスポゾン・ファミリーIS200/IS605に由来するIscBとTnpBが、それぞれ、Cas9とCas12の祖先にあたると、提案した。次いで、Feng Zhang [*2]とVirginijus Siksnys [*3] のグループがそれぞれIscBとTnpBが、CRISPR-Casシステムに似て、RNAにガイドされるDNAエンドヌクレアーゼとして機能することを、明らかにした。IscBとTnpBはCas12fよりもさらにコンパクト (350-550 aa)である。
IscBが少数の原核生物の門に少数見られるのに対して、TnpBは、バクテリアとアーケアの100万を超える推定遺伝子座に見られ、TnpB候補は、極めてコンパクトなゲノムエディターの眠れる資源と考えられる。そこで、著者らは、TnpB候補を同定・評価するために、大規模なin silico 解析と実験によるスクリーニングからなるワークフローを整備した。
著者らは、Siksnysらが提案した"Peel, Paste and Copy"モデル [Siksnys論文 [*] の図1 b 参照]に着想を得て、各TnpB遺伝子座をめぐるゲノム配列からTAM (transposon-adjacent motif/トランスポゾン隣接モチーフ)とreRNA (right-end transposon element-derived RNA/右端トランスポゾンエレメント由来RNA) を直接抽出することが可能であると想定した。
挿入配列 (Insertion sequences) の網羅的データベースISfinderにおいてTnpBとアノテーションされている候補で検証した結果、各TnpBの好ましいTAM配列は、各IS200/IS605遺伝子座の左端(LE、4-5 nt)上流の切断配列と概ね同一であり、reRNAバックボーンの3'末端はIS200/IS605遺伝子座の右端(RE)と正確に一致することが示された [Siksnys論文の図1 a参照]。すなわち、想定通り、TAMとreRNAバックボーンをゲノム配列から直接検索可能であり、ひいては、ゲノム配列からTnpBを推定可能なことが示された。
次に、蛍光レポーターを用いて、TnpBタンパク質のreRNAの特徴を明らかにした: 第一に、TnpBシステムは様々なサイズのreRNAを許容し、120-300 ntのスキャフォールドが編集活性をサポートする;第二に、reRNAの3’末端がREの3'末端に完全に一致する;第三に、TnpBは16-20 ntのターゲット長を好む。最後に、reRNAガイドの最小シード領域は、TAMに隣接する12ntであった。これらの特徴は、TnpBシステムにおける効率的なreRNAを設計するための重要なパラメーターを示唆する。
続いて、活性型TnpBシステムと不活性型TnpBシステムを区別するために、タンパク質レベルの解析を行った。アーケア由来のTnpBシステムの中で、大腸菌に移植して活性化するものは2種類であったが、細菌由来のTnpBシステムでは24種類が活性を示した。TnpB遺伝子座のコピー数は転移活性を反映するため、活性型TnpB遺伝子座はコピー数が多い傾向がある。さらに、不活性型TnpBと比較して、活性型TnpBは3つの特徴的なドメイン(HTH、OrfB_IS605、ZnF)をすべてコードしている割合が高い(81%対36%)。タンパク質配列のアラインメントから、活性型TnpB間で保存されている10個のアミノ酸を同定した。
ここまでで確立したゲノム配列のin silico 解析からのワークフローをベースに、原核生物のゲノム配列からTnpB候補をde novo でアノテーションするパイプラインを開発し、機能的スクリーニングのために14の候補を選択し、実験評価した。その結果、2種類のTnpB候補、ISAam1 (369 aa) とISYmu1 (382 aa) 、がヒト細胞において高い遺伝子編集活性を示した。
ISAam1とISYmu1 TnpBの応用可能性を詳細に評価するために、3つのCas12fs、Nme2Cas9、SaCas9をベースとする5種類の小型CRISPR-Casエディターと比較して、その活性と特異性を比較した。各システムの全てのgRNAは、狭い範囲で重複するように設計した。その結果、ISAam1 (369 aa) とISYmu1 (382 aa) TnpBsとSaCas9は、他のシステムよりも比較的高い活性と特異性を示した。
ISAam1とISYmu1 TnpBの応用可能性を詳細に評価するために、3つのCas12fs、Nme2Cas9、SaCas9をベースとする5種類の小型CRISPR-Casエディターと比較して、その活性と特異性を比較した。各システムの全てのgRNAは、狭い範囲で重複するように設計した。その結果、ISAam1 (369 aa) とISYmu1 (382 aa) TnpBsとSaCas9は、他のシステムよりも比較的高い活性と特異性を示した。
自然界のTnpB資源をフルに活用するには、そのコンパクトさからIS1341トランスポゾンファミリーのさらなる探索、IS607ファミリーや真核生物TnpB(Fanzor)のメカニズムの解明、ターゲティング範囲の拡大、DNAメチル化ドメインのような機能的エレメントとの融合による不活性化 (dead) TnpBツールの確立など、いくつかの魅力的な方向が見え、また、コンパクトな遺伝子エディターとしてのTnpBシステムは、遺伝子治療において大きな可能性を秘めている。
[関連論文とcrisp_bio記事]
- "ISC, a novel group of bacterial and archaeal DNA transposons that encode Cas9 homologs" Kapitonov VV, Makarova KS, Koonin EV. J. Bacteriol. 2015-12-28.;"Evolutionary classification of CRISPR– Cas systems: a burst of class 2 and derived variants" Makarova KS [..] Koonin EV. Nat Rev Microbiol 2019-12-19.
- [*] [20211010更新] トランスポゾンにコードされているIscBタンパク質は,RNAにガイドされてヒトゲノムを切断し,藻類にも存在する.;The widespread IS200/605 transposon family encodes diverse programmable RNA-guided endonucleases" Altae-Tran H, Kannan S [..] Zhang F. Science2021-09-09.
- [*] 2021-10-10 トランスポゾンに関連するTnpBは,プログラム可能なRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼである.;"Transposon-associated TnpB is a programmable RNA-guided DNA endonuclease" Karvells T [..] Siksnys V. Nature. 2021-10-07.
- 2023-06-01 トランスポゾンにコードされているTnpBは、自身のmRNAをωRNAへとプロセスしそれをガイドとして利用する.;"The Transposon-Encoded Protein TnpB Processes Its Own mRNA into xRNA for Guided Nuclease Activity" Nety SP [..] Zhang F. CRISPR J 2023-06-01.
- 2023-07-03 真核生物からヒトゲノム編集可能なRNA誘導型エンドヌクレアーゼを再発見.;"Fanzor is a eukaryotic programmable RNA-guided endonuclease" Saito M, Xu P [..] Zhang F.Nature 2023-06-28.
- 2023-07-03 真核生物とウイルスにも, 原核生物のCRISPR-Cas様エンドヌクレアーゼが存在する.;"Programmable RNA-guided endonucleases are widespread in eukaryotes and their viruses" Jiang K, Lim J [..] Abudayyeh OO, Gootenberg JS. bioRxiv 2023-06-14 [preprint]
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