[出典] "Cas12n nucleases, early evolutionary intermediates of type V CRISPR, comprise a distinct family of miniature genome editors" Chen W, Ma J [..] Ji Q. Mol Cell 2023-07-03. https://doi.org/10.1016/j.molcel.2023.06.014 [著者所属] ShanghaiTech U, Ningbo U;グラフィカルアブストラクト 

 中国の研究チームが、ミニチュアなCRISPRタイプV-U4のヌクレアーゼCas12nが、トランスポゾンにコードされているIS200/IS605ファミリーのタンパク質の一つであるTnpB [*]の最近縁であり、進化の過程で、TnpBからCRISPR タイプVの大型な ヌクレアーゼに向かう進化の過程で、最初期の中間体と見られることを報告した。

 タイプ V CRISPR-Casシステムについては、スクリーンショット 2023-07-05 20.28.42ヌクレアーゼとしてサイズが750-1,500 aaと比較的大きな一連のCas12と、サイズが400-700 aaと比較的小さな一連のCas12fが知られており、Cas12fはサイズが小さいことで、近年、注目を集めている [いくつかのCasエフェクーのサイズ右表参照]。Cas12ファミリーは、IS200/IS605トランスポゾンにコードされているIscB, IsrB, およびTnpBの3種類のタンパク質のうちTnpBから進化したと考えられている [*]。Cas12aを代表とするいくつかのCas12メンバーは、RNAにガイドされてDNAを切断する機能を帯びているが、ガイドRNAの起源、構成、プロトスペーサー隣接モチーフ (PAM) の特異性などの点で、これまでに同定された祖先とされるTnpBと著しく異なっている。

 研究チームは今回、配列をベースとするタイプV CRISPRの一連のエフェクターのクラスタリングと進化系統解析から、TnpBに最も近縁のタイプV-U4 C2C9ヌクレアーゼを同定し、これをCas12n (サイズ400-700 aa)と称した [原論文 Figure 1 参照]。
 
 このCas12nの生化学的解析から、Cas12nは独特の5’-AAN PAM配列を認識し、Cas12n遺伝子の末端30ヌクレオチドに由来するsgRNAにガイドされて、標的DNAの二ヶ所を切断する単量体ヌクレアーゼである可能性が高いことが明らかになった。この特徴は,祖先タンパク質であるTnpBとωRNAのシステムに極めて類似しており、TnpBから大型なCas12ヌクレアーゼへの進化の初期の中間体であることを示唆した進化系統解析からの推定と整合する結果となった。
 
 Cas12nのゲノム編集活性については、バクテリアにおいて強固なゲノム編集を確認し、さらに、sgRNAの最適化を経てヒト細胞において最大80%のindel誘導効率を持つ高効率CRISPR-Cas12n (Cas12Proと呼ぶ) システムを実現した。
 
 本研究によって、タイプV CRISPRの進化メカニズムの理解が深まり、臨床応用への可能性を高めるミニチュアCRISPRツールが生まれた。

[*]
IS200/IS605ファミリータンパク質とし、IscB, IsrB, およびTnpBの3種類が知られており、TnpBがCas12aの祖先と考えられているのに対して、IscBはCas9の祖先と考えられている:[20211010更新] トランスポゾンにコードされているIscBタンパク質は,RNAにガイドされてヒトゲノムを切断し,藻類にも存在する.;"The widespread IS200/605 transposon family encodes diverse programmable RNA-guided endonucleases" Altae-Tran H, Kannan S [..] Zhang F. Science 2021-09-09.