2023-07-13 14:55 関連crisp_bio記事へのリンクを追加:2019-09-02 牛肉の消費量が減少すると二酸化炭素排出量が減少する
[出典] NEWS FEATURE "Fungi bacon and insect burgers: a guide to the proteins of the future" Jones N 
(科学記者)Nature 2023-07-04.  
https://doi.org/10.1038/d41586-023-02096-5

 ヒトは平均値で見ると、タンパク質を十分に摂取している。北米のような高所得地域では、1日あたりの必要量50グラムの倍の量を摂取し、低所得地域でも60グラムを超える量を摂取している。主要なタンパク源である肉の消費量は所得が上がるにつれてが増加する傾向にある。典型例として、中国の肉の消費量は、1960年から2010年にかけ15倍になった。世界的な肉の年間消費量は、2010年の3億トン弱から増加し続け、2050年には4億5千万トンを超えると予測されている。この肉の消費量の増加は、動物、人々、そして地球に負荷をかけている、EAT Lancet Commissionの2019年報告は、ブタとウシを含むレッドミートの消費量を75%減じ、野菜、果物、豆類とナッツ類の消費量を少なくとも倍増する必要があるとしている。
 
 肉は豊富な必須アミノ酸と栄養素を帯び、また、畜産はエコシステムと社会において重要な役割を果たしている。一方で、ウシのような反芻動物由来のタンパク質の20%を微生物由来のタンパク質に置き換えることで、2050年までに毎年の森林破壊をほぼ半減できるとされている。

 動物タンパク質は植物タンパク質に置き換えることができる (注:日本では、江戸時代にはすでに牛鍋屋があったが、肉食が広がったのは明治政府が発足当初から肉食奨励のキャンペーンを大々的に展開して以来である: Wikipedia)。豆類、穀物、ナッツ類は、安価でどこでも手に入り、ヒトの健康に寄与してきた長い歴史があり、かつ、二酸化炭素の排出量 (以下、カーボン排出量)が低いタンパク質源である。
 
 植物由来のタンパク質は、中国発祥とされる豆腐やテンペ、インドネシア発祥とされるセイタン、など、長年お馴染みの食品に含まれていたが、 2023-07-07 11.04.57ここ数十年、植物由来の代替肉を研究開発・販売する Impossible Foods, Beyond Meat, Gardeinなどの企業が勃興してきた。しかし、代替肉の産業はまだニッチ産業である。ワシントンDCにある非営利団体のGood Food Instituteは、「植物をベースとする肉と魚の代替食品の市場は,2022年に2021年から8%拡大し61億ドルに達したが、数兆ドルの規模の動物由来の肉の市場に比べれば、tinyである」としている。
 
 その中でここ数年、植物に限らず、昆虫から微生物まで、可能性があるあらゆる生物をベースとして、より効率的かつより環境に負荷をかけない食品生産を目指す企業が増えて来た。企業にとっては、コストと味 (消費者に好まれる)が勝負である。
 
 記事では、ここから7つのオプションが紹介されている:(1) 培養細胞由来;(2) 植物 (大豆、えんどう豆、モロコシなど) 由来;(3) バクテリアや酵母・菌類の遺伝子組み換えにより生産する組み換えタンパク質;(4) 糸状菌由来 (マイコプロテイン);(5) 微細藻類由来;(6) バクテリア由来;(7) 昆虫由来。続いて、7つのオプションを含むタンパク質源11種類について、ヒトの健康に良いラインキングを、文献を引用して、紹介している。なお、マイコプロテインがトップにランキングされている。
 
 2021年のオックスフォード大学の報告The climate impact of alternative proteinsによると、食品産業システムから放出される温室ガスは、全放出量の4分の1にあたる14ギガトンであり、その60%がウシをはじめとする肉由来 (家畜の餌もここに含められている) 、40%を植物系食品が占めていた。その上で、この60%を、代替エネルギーを利用した代替肉消費に向ければ、全体として、食品からの温室ガス放出量を半減できるとした。
 
 今後は、温室ガス排出に加えて、生産に必要な土地(面積)の広さや、必要な資源の利用可能性、加工業者や消費者の嗜好などの観点から、最適なオプションを選択していくことになる。例えば、代替エネルギーが安価であれば、増殖が早い微生物をタンパク質粉末の生産に利用するのが良策であろうし、農業廃棄物が豊富な環境であれば、繊維性の代替肉を生産するマイコプロテインがナゲット生産に向けて良策であろう。

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